情報科学研究科賞を受賞して

マルチメディア工学専攻 | 今奈良 祐紀

 この度は、情報科学研究科賞という大変名誉ある賞をいただき、光栄の至りに存じます。私は、大阪大学工学部電子情報工学科4年進級時から博士前期課程を含めた3年間、ビジネス情報システム講座(薦田研究室)にて研究に従事してきました。今回の受賞は、薦田憲久教授、前川卓也准教授、鮫島正樹助教、および広島工業大学の秋吉政徳教授の熱心なご指導ならびに薦田研究室の皆様のご協力の賜物です。また、東京電機大学の佐々木良一教授および新日鉄住金ソリューションズ株式会社の森久博博士には、研究の該当分野の専門家としての様々な助言をいただきました。この場をお借りして、皆様に厚く御礼申し上げます。

 私は、この3年間、情報システムの開発におけるリスク管理を対象として研究に取り組んできました。情報システム開発プロジェクトの計画段階では、過去のプロジェクト計画書とプロジェクト報告書を参考にしてリスク管理が行われています。また、設計・開発段階においては、バグ管理 システムを利用したリスク管理が行われています。まず、プロジェクト計画段階を対象として、プロジェクトマネージャのリスク管理支援の研究に取り組みました。プロジェクト計画書およびプロジェクト報告書は大量の文章で構成されるため、これらを読んでリスクを検出し、対策立案の参考となる過去の対策を探す作業は時間がかかります。そのため、十分に内容を確認できず、リスクが未検出のまま残ってしまうことや、より適切な対策を見落とすことが問題となります。そこで、計画段階のプロジェクトのリスクを検出し、同様のリスクに対して過去に実施された対策を提示するシステムを提案しました。提案システム実現のため、プロジェクト計画書とプロジェクト報告書の特徴を分析し、リスク検出と対策提示のための文書処理技術を開発しました。

 次に、バグ管理システムを対象として、依存関係のあるバグを特定するシステムを提案しました。バグ管理システムには、バグの管理および開発者同士で議論を促進するため、バグに関する開発者のコメントや依存関係のあるバグを登録することができます。バグ管理システムを参照することで、開発者の意見や他のバグとの依存関係を考慮しながらバグ修正の方法や優先順位を検討することができます。しかし、バグ管理システムには数多くのバグが登録されるため、依存関係のあるバグの登録作業の負担が大きいという問題があります。キーワード検索で依存関係のあるバグの候補を絞り込むことはできますが、候補となるバグに対する開発者のコメントを確認する必要があり、効率よく依存関係のあるバグの登録が行えません。提案したシステムは、バグ間の依存関係に起因する記述特徴を用いて、単純なキーワード検索と比較して精度よくバグを探すことを可能としています。

 これらの研究は一筋縄ではいかず、試行錯誤を繰り返しました。研究が一段落しても次々と現れる論文執筆などの終わりの見えない作業に悪戦苦闘しながらも、何とか満足のいく結果を出して締めくくることができたことに一安心しています。そればかりか、情報科学研究科賞という形で評価までしていただき、無上の喜びを感じます。前述の通り、私は研究に当たって研究室内外の方に協力していただきました。また、私生活等の研究以外でも、数々の暖かい協力と応援をいただきました。今回の受賞が皆様にとって少しでも恩返しになればと思います。卒業して大阪大学を離れてからも、この受賞を励みに日夜研鑽を積む所存です。

 末筆ながら、この3年間ご指導いただいた薦田研究室の先生方に、改めて感謝の意を表します。

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©Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University, Japan