巻頭言
情報科学研究科は、工学研究科・基礎工学研究科・理学研究科に分散して存在していた情報処理技術およびネットワーク技術に関する教育研究組織を改組・再編し、平成14年4月に創設され、早くも10年を過ぎました。本研究科では、情報科学の基礎や応用はもとより、情報数学の基礎や応用、バイオ情報工学まで、非常に幅広い分野の教育、研究を活発に行ってまいりました。
これらの活動の成果として、最近、3つの大きな出来事がありました。
1つ目は、文部科学省博士課程教育リーディングプログラムの複合領域(情報)において、ヒューマンウェアイノベーション博士課程プログラムが採択されたことです。情報科学研究科、生命機能研究科、基礎工学研究科が連携して、5年一貫コースで、将来日本のリーダーとなるような博士課程の学生の教育を行うものです。毎年20名程度の学生を募集し、情報、生体、認知それぞれの考え方を深く学んで、情報技術の方向性を変え、ブレークスルーを起こすことができる人材を育成して行きたいと考えています。
2つ目は、これも文部科学省の情報技術人材育成のための実践教育ネットワーク形成事業「分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワーク」(通称enPiT)が採択されたことです。この事業は、本研究科が全国連携15大学の中心となって、大学や企業との間で緊密に連携をとりながら、社会の新たな価値や産業の創出を情報技術の応用を通じて行える人材育成を行います。クラウドコンピューティング、セキュリティ、組込みシステム、ビジネスアプリケーションの4つの分野を対象に、グループワークを用いた短期集中合宿や分散PBLを実施し、実践力を備えた情報人材を育成します。
3つ目は、念願であった研究棟の第三期分の予算が、平成25年度の予算として認められ、平成27年の初頭には、今のA棟、B棟とほぼ同じ大きさのC棟が完成することです。このC棟の完成によって、今まで、理学研究科や工学研究科に分散していた教員を一同に会することができ、教員や学生の間の連携をよりいっそう取りやすくなり、教育や研究の発展に大きく寄与することになります。
このように、10年の節目を経て、当研究科は、外形的に大きな飛躍をしつつあります。それにともなって、教育や研究の中身も大きく飛躍させていきたいと考えています。情報科学技術は、今後も大きな成長や発展が期待され、社会の基盤としてますます重要な地位を占めていくことになります。我々は、それに必要なイノベーションを起こし、社会にインパクトを与えるような研究を目指すと共に、このようなIT社会の発展に尽くす人材の教育を推進していきます。