本研究科で設けられている若手教職員を対象とした海外派遣制度を利用させていただき、2013年1月から2月まで、イタリア、トリノのIEIIT-CNRに滞在しました。トリノというとオリンピックというイメージが強いですが、イタリア統一時の首都であった歴史ある都市であり、お菓子、とくにチョコレートが有名です。また、フランス、パリのSUPELECにおいて受け入れ研究者であるRoberto Tempo博士と Fabrizio Dabbene博士が行った集中講義を聴講したため、あわせて報告させていただきます。
国の研究機関であるIEIIT-CNRの情報・システム工学グループはトリノ工科大学にあります。大学内にあるため、通常の研究所と異なり、博士課程の学生の指導を請け負うなど教育にもかかわっています。ここで、制御理論関係の研究を行っているTempo博士、Dabbene博士と共同で研究を行いました。現在、博士らは確率的アプローチを用いてシステム同定の新しい枠組みを作ろうと精力的に研究をされており、そこでの問題の解決に取り組みました。博士らは、制御系の解析・設計のための確率的アルゴリズムに関する研究のパイオニアであるため、同時期に同分野に対する研究を行っているスペインセビリア大学のAmalia Lucuiq博士も滞在されるなど外部からの訪問者も頻繁でした。
図1:トリノ工科大学
一方、フランス・パリで聴講した講義は博士課程の学生を主な対象とするものです。Tempo 博士は、「ヨーロッパの大学では、博士課程の学生は研究に集中することができ、深い専門的知識を有する。一方、アメリカの大きな大学では、制御理論だけでも、非線形制御、ロバスト制御、適当制御などなど、さまざまな講義が開講されているため、広い範囲の知識を持っている」と話されており、この講義はそれに対するヨーロッパ圏の大学が出した答えの一つであるようです。講義は全26のモジュールに分かれており、各モジュールが一つの集中講義に対応します。受講後にレポートを提出し合格すると、そのモジュールの単位となり、それは大学においても認められるそうです。参加者は15名ほどで、アイルランド、イギリス、オランダ、スイス、スウェーデン、スペイン、ドイツ、フランスなどのヨーロッパ諸国はもちろん、アメリカと日本からも参加者があり、本講義に対する関心の高さが伺えました。講義は、最近、博士らがGuiseppe Calafiore准教授(トリノ工科大学)と改訂版を出版したランダマイズドアルゴリズムの成書の内容に沿って講義されました。博士らは、日本やアメリカなどからも参加者があったことを大変喜んでおり、来年はさらに良い講義にしたいと意気込んでおられました。
最後になりますが、このような貴重な機会をくださいました情報科学研究科の諸先生方、職員の皆様に心より感謝いたします。