当講座は、(株)国際電気通信基礎技術研究所(略称:ATR)知能ロボティクス研究所に研究室を構える連携講座です。情報化社会の次世代として期待されるロボット化社会において、ロボットが人々の暮らしに溶け込み、人々を支援する技術の基盤となる、人、ロボット、環境のインタラクションに関する研究を要素技術から実社会での高度応用まで幅広く行っています。その中で現在進めている研究を紹介します。
ロボットによる街角の情報環境の構築
(独)科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業CRESTの一貫として、広域な距離画像センサネットワークを用いて街角の人々の移動行動や場所の使われ方を認識するための環境理解技術、ロボットが人々に親和的に話しかけるためのインタラクション技術の研究開発に関するプロジェクトを推進しています。
図2:ロボットによる多様なサービスの例
図1:人の行動をリアルタイムで
計測・解析
混雑状況を予見するプランニングの研究
ロボットを街角で動かす中で見えてきた問題の1つに混雑の問題があります。ロボットは人と違って街角における常識を持たないため、狭い通路で周囲の人と話して混雑を引き起こしてしまうことが分かってきました。この問題に対して、混雑状況をロボットが引き起こすかどうかを予見するための歩行者行動シミュレータを開発しています。さらに、周囲の混雑状況に対して、主観評価に基づいて歩行者の歩行の「快適さ」をモデル化することで、シミュレーションで街角の環境を再現し、邪魔な状況を起こさない行動をプランニングする方法を実現しました。
図3:混雑を引き起こすロボット
子供とロボットとの関わり合いの研究
将来、人が行き交う街角の広場や通路で、移動可能なロボットが警備や買い物情報の提供などの役割を担うことが期待されています。しかし、上記の混雑の問題に加えて、興味本位に関わろうとして集まってきた子供たちの行動がエスカレートして、執拗な妨害に至る、いわゆる「ロボットいじめ」ともいえる現象が起きることも分かってきました。このロボットいじめが生じることにより、ロボットが自由に動き回ることができなくなり、十分にロボットが担っている役割を果たす事ができなくなるのみならず、人身事故の発生、人同士のいじめに通じる部分があり子供の教育上に悪影響や他者から見て不愉快な空間を生み出すなどを引き起こすとも考えられます。このロボットいじめの要因をビッグデータから分析し、ロボットいじめの発生時期を予測すること、そしていじめられている状況をロボット自身で解決できれば、ロボットいじめ問題を解決でき、街角でのロボット実用化に向けて一歩前進すると考えています。
図4:子供とロボットの関わり合い