ディペンダビリティとは広い意味で「信頼できる」ことを指す言葉です。ディペンダビリティ工学講座では、真に「信頼できる」情報システムを実現するための諸技術について、特にソフトウェアシステムを主たる対象として、研究開発を行っています。2012年4月より、新しいスタッフによる体制の下、再スタートを切りました。学生については、大学院博士後期課程2名(社会人)、前期課程3名、学部4年生5名で、今年度の講座の規模はミニマルでしたが、充実した研究活動を進めることができました。
以下に、現在取り組んでいる研究課題を紹介します。まず、システムのテストに関して、テストケースの設計というテーマに取り組んでいます。たとえば、組合せテストという機能の相互作用を重点的にテストする手法については、今年度、自動テストケース設計ツールCIT-BACHを開発しフリーウェアとして公開しました。このツールは、商用のテストケース設計ツールQumiasの内部エンジンと採用され、実際の開発現場で用いられています(図1)。
テスト以前の設計レベルでの高信頼化技術としては、モデル検査に着目してその応用について研究を行っています。モデル検査は、状態遷移システムとして検証対象の動作をモデル化し、欠陥の有無を機械的に判定する検証手法です。今年度は、UMLのユースケース図から状態遷移モデルを作成し検証することが可能なことを、具体例を通して示しました。
また、ネットワークレベルでの高信頼化について、たとえば、ネットワーク上の複数サーバによるデータのレプリケーションやブロードキャストプロトコルといった応用を対象に、研究を行っています。来年度はこれらの課題に加えて、送配電システムの制御監視ネットワーク(SCADAネットワーク)の高信頼化という新たなテーマに挑戦する予定です。
図1:テストケース設計ツールQumiasのスクリーンショット