情報基礎数学専攻
組合せ数学講座の紹介

情報基礎数学専攻 | 日比 孝之

 平成24年度の組合せ数学講座における話題を紹介しよう。

 組合せ数学講座では、国際研究集会「凸多面体の最近の潮流を探る」を、京都大学数理解析研究所に於いて、2012年7月23日から27日に開催し、欧米諸国からの27名の参加者を含む、約70名が参加し、盛会であった。凸多面体の数学の歴史は古く、オイラーの公式v-e++f=2に遡る。現代の凸多面体論は、可換代数、代数幾何、グレブナー基底の理論などに加え、計算代数統計とも関連が深く、凸多面体の計算(面、体積、三角形分割など)に有効な計算ソフトも続々と開発されている。このような背景を踏まえ、本研究集会では、凸多面体論の最近の研究の進展状況を総括し、その潮流を把握するとともに、将来の研究の展開のシナリオを描くことをその目的とし、招待講演者は、凸多面体の大御所(Richard Stanleyら)、最前線で活躍する40歳代から50歳代の研究者とともに、有望な若手研究者を厳選した。その講演と活発な討論から、凸多面体の研究の現状と潮流を理解することが可能であった。特筆すべき事柄の一つに、50歳代の招待講演者のほとんどが自分自身の研究に関連する未解決問題を提唱したことである。そのような未解決問題は、今後の凸多面体論の研究の展開に強い影響を及ぼすとともに、凸多面体論の研究に携わる若手研究者の育成を促進するものと期待される。

 次に、組合せ数学講座の卒業生の活躍を紹介します。平成24年9月に、博士(理学)の学位を取得した東谷章弘君(現在、日本学術振興会特別研究員、大阪大学)が、「整凸多面体の組合せ論的および代数的研究」により、2012年度日本数学会賞建部賢弘賞奨励賞を受賞しました。日本数学会賞建部賢弘賞には特別賞と奨励賞があります。奨励賞は、極めて若くして優れた業績を挙げる等、数学研究の活性化に寄与した数学者に対し、その研究を奨励する目的で授与されるものです。東谷君は、博士前期課程入学後、学位を取得するまでのわずか3年6ヶ月の間に、16編の論文を執筆し、幾つかの論文は、既に、Discrete and Computational Geometryなど、権威ある国際雑誌に掲載されています。東谷章弘君の益々の活躍に多大なる期待をするとともに、今後も、優れた業績を挙げる数学者が組合せ数学講座から誕生することを強く望みます。

村田正幸先生の講演風景

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