ソフトウェアは銀行のオンラインシステム、株取引、自動改札、自動車制御、携帯電話など、社会のあらゆるところで利用されている重要な基盤であり、その故障の発生により、社会に大きな損失をもたらします。ある試算によると日本国内で毎年約3兆円の損失が発生しているとも言われています。また、ソフトウェアは、多くのサービスや製品の中核技術であり、その良し悪しがそのサービスや製品の成功の鍵を握っています。しかし、これまで、ソフトウェアの特性を深く理解して研究・教育するプログラムがなかったため、産業界からは社会にイノベーションを引き起すような高いポテンシャルの技術開発や、高い知識を持つ人材の育成などを組織だって行うことを強く求められていました。
このような背景のもと、「ソフトウェアイノベーション先導のための研究教育プログラム」は、文部科学省特別経費による研究・人材育成プログラムとして、平成23年度~平成26年度の4年間で実施されます。
このプログラムは、産学連携、分野融合に基づいた研究および教育プログラムを実施し、ソフトウェアデザイン技術を核とした高度なソフトウェア技術を開拓し普及させることを目的としています。この活動は、情報科学研究科、大阪大学金融・保険教育研究センター、国立情報学研究所(NII)GRACEセンターと協働で実施しており、5名の特任教員が中心となって推進しています。
産学連携領域では、産学連携に基づく実践的技術の開発を行い、その成果を活かして、高度副プログラム「大規模適応設計プログラム」を設けると共に、演習プログラム「IT実践力道場」として、実践的プロジェクトマネジメント演習、クラウドソフトウェア開発演習、組込みソフトウェア開発演習を用意し、学内外の学生や社会人を対象としたソフトウェア技術の実践的演習の場を提供することを目指しています。クラウドソフトウェア開発をはじめとしたソフトウェア研究の先鋭化を行うとともに、大阪大学で開発された教材のみならず他機関で開発された種々の先端的教材を収集しNIIのEdubase Portal等を通じて広く普及します。
分野融合領域では、人文知識領域とIT知識の融合、及びそれらの利活用によるブレークスルーを可能とする技術・知識の教育、実ビジネスで必要とされる知識・スキルについての教育を主に学部学生に対して行い、金融・保険分野におけるIT技術の高度な活用についての教育を大学院生対象に行う予定です。また、人文系知識領域とITとの融合による技術革新やIT化コストの定量的評価技術、さらに高頻度データ処理技術と金融リスク評価手法等の研究も推進します。
平成24年度には、最初の教育プログラムとして、高度副プログラム「ファイナンス・ソフトウェアコース」が開講され、情報科学研究科の学生も含む14名が受講しています。また、平成25年度からは、学部学生を対象とした「IT社会基盤基礎論」(全学教育推進機構基礎セミナー)を前期と後期に実施し、大学院生を対象として、クラウド開発、プロジェクトマネジメントに関する講義・演習を中心とした高度副プログラム「大規模適応設計プログラム」と組込みソフトウェア開発演習を中心とした高度副プログラム「組込みシステム・コース」を開講する予定です。
プロジェクト推進の枠組み
開講プログラム・授業
講義・プログラム名 | 対象内容 | 内容 |
高度副プログラム |
大学院生 | クラウドコンピューティング技術、プロジェクトマネジメントについての講義や演習を行います。このコースは、国立情報学研究所の協力に基づき、実際のクラウドコンピューティング環境を利用したソフトウェア開発手法と、開発プロセスのマネジメントに関する技術・知識の獲得を目的とします。 |
高度副プログラム |
大学院生 | 組込みシステムを構築するために必要となる下記のトピックスについて、演習を中心とした教育を実施します。 |
高度副プログラム |
大学院生 | ファイナンス・ソフトウェア人材の育成を目的として、金融工学、リスク・マネジメント、計算ファイナンス、統計・計量ファイナンスに関する基礎科目群を提供します。より具体的には、(1)金融資産の運用とリスク・マネジメントや金融デリバティブの価格付けに関する基礎数理と数値的手法、(2)各種金融データの統計・データ・計量分析手法、についての講義に加えて、MatLab、R、等のブログラム言語を用いた数値計算演習や各種統計ソフトを用いた実証分析演習を行う科目をバランス良く提供します。 |
基礎セミナー |
学部生 | 学部生を対象として、人文知識領域とIT知識の融合、及びそれらの利活用によるブレークスルーを可能とする技術・知識の教育を目的としています。ロジカルシンキングやクラウドコンピューティング等これからの実ビジネスで必要とされる知識・スキルについての講義・演習を行います。 |