情報科学研究科賞を受賞して

情報システム工学専攻 | 飯塚 翔一

 この度は、情報科学研究科賞という名誉ある賞をいただき、大変光栄に思います。私は、大阪大学工学部電子情報工学科3年時に、早期配属制度により情報システム構成学講座(尾上研究室)に配属され、大学院情報科学研究科情報システム工学専攻の博士前期課程に進学しました。この4年間、尾上孝雄教授、橋本昌宜准教授のご指導の下、研究に従事してまいりました。日々熱心にご指導をしていただいた研究室の先生方と、多くの助言をいただいた尾上研究室の皆様に深く感謝申し上げます。

 私は、学部3年時から大規模集積回路(VLSI)の適応的速度制御の評価手法についての研究を行ってまいりました。プロセッサなどに代表される集積回路は年々微細化が進み、性能が向上していますが、同時に微細化に伴う弊害も顕在化しており、回路の性能向上の妨げとなっています。微細化の弊害として代表的なものに性能ばらつきが挙げられます。これは集積回路を製造する際に発生する製造ばらつきや、回路の動作状態や温度などによる動的なばらつきにより回路性能が変化してしまう現象です。ばらつきが顕著な微細な回路では、ばらつきが発生しても回路が正常に動作するように常に余裕を持たせる必要があるのですが、余裕を持たせた分回路の消費電力が増大してしまいます。そこで、それぞれの回路が自身の性能ばらつきを検出し、最適な速度で動作するような適応的速度制御によりばらつきによる故障を回避しつつ、省電力化を達成することができます。

 私の研究ではこの適応的速度制御の性能評価を主に行っておりました。集積回路に対する適応的速度制御を実現するためには、故障の発生を最低限に抑えつつ、消費電力を可能な限り少なくするような制御方法の検討が必要となります。ですが、動的に動作速度が変化する適応的速度制御の定量的な性能評価は困難であり、論理シミュレータを用いる方法では百万年以上の計算時間が必要で、現実的な時間での評価ができないということが問題でした。そこで私たちは、適応的速度制御をした回路のふるまいを連続時間マルコフ過程でモデル化し、状態遷移によって回路動作を記述することにより高速な性能評価を実現しました。論理シミュレータでは百万年必要な評価を提案手法では30秒で行うことが可能です。これは適応的速度制御の実用化に向けて重要な技術であり、ひいては回路の信頼性向上や省電力化につながる成果です。

 4年間の研究生活を通じて、研究の題材となる問題意識を持つことや、課題に対するアプローチの方法など、研究に対する重要な姿勢を尾上研究室の先生方や先輩方に教えていただきました。また、活発な議論の機会や国内外での発表の機会を与えていただいたことも、自身の成長に大きく役立ったと感じており、非常に感謝しています。今回、このような賞をいただくことができたのは、先生方の熱心なご指導や研究室の皆様のご支援によるものです。改めて、皆様には深く感謝申し上げます。

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©Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University, Japan