情報基礎数学専攻
コンピュータ実験数学講座の紹介

情報基礎数学専攻 | 小田中 紳二

 数学は情報科学を支える基礎であり、また逆に、情報科学とコンピュータの発展も数学に新しい流れをもたらしています。このように、今日、数学と情報科学は理論、応用の両面において緊密な関係にあります。本専攻はサイバーメディアセンターの協力の下、理学研究科数学専攻とも連携を保ちながら、情報科学の基礎を担う数学の新天地を開拓することを目指して研究・教育を行っています。今回は、本専攻に6つある講座の中から、協力講座のコンピュータ実験数学講座を紹介しましょう。

コンピュータ実験数学講座

 様々な物理、化学、生物、社会現象における数理モデルとして、偏微分方程式は中心的な役割を果たします。当講座は、そのモデル自身の数理的解析や、モデルである偏微分方程式に対する数値解析について研究しています。以下、その研究の幾つかを紹介して講座の紹介といたしましょう。

量子エネルギー輸送モデルによる先端MOSFETシミュレーションの研究

 Wigner-Boltzmann方程式のモーメント展開から量子流体モデルが導出され、古典的流体モデルと対応するマクロモデル階層が形成されます。上位の階層にある量子流体(QHD)モデルの拡散近似から量子エネルギー輸送(QET)モデルを開発し、量子閉じ込め輸送と共にホットキャリア効果が反映される物理モデルを構成しました。さらに、近年開発が進む薄膜MOSFET構造に対応するため、4-モメントモデルを基礎にしたQETモデルを新たに提案しました。Si MOSFETだけでなく17nm世代以降の次世代デバイスとして期待される高移動度材料のチャネルを有するGeや InGaAs MOSFET内のホットキャリア効果を伴った量子閉じ込め輸送を解析し、そのデバイス特性の予測ができます。さらにマルチゲートMOSFET構造のSiチャネルと高移動度材料チャネルの特性を比較・解析しています。

図1:マクロモデル階層

ボロノイ格子構造保存数値解析

 偏微分方程式のもつ数学的性質を保存する構造保存数値解析は近年盛んに研究されていますが、例えば微積分学におけるGreen則などの離散化が必要で、これが実際上の困難となります。しかし、ボロノイ格子という空間離散化法を用いると、この困難を克服して任意格子点に基づいた離散Green則などが実現できるため、大変期待されています。実際、離散変分導関数法とよばれる構造保存数値解析の一種はこのボロノイ格子を利用することができ、優れた数値解析に使えることが示されています。

図2:ボロノイ格子-離散変分導関数法によるCahn-Hilliard方程式の数値シミュレーション

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©Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University, Japan