海外インターンシップ: NTU研修体験記(中川 将史)
NTU研修体験記(中川 将史)
  • はじめに

    私は2009年8月1日から10月29日までの90日間、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金制度を利用して、シンガポールのNanyang Technological University(NTU)にて研修を行いました。本稿では現地での体験を報告いたします。

  • シンガポール

    シンガポールはマレー半島の南端に隣接するシンガポール島とその周辺の島嶼を領土とする都市国家で、東南アジアの中心および赤道直下に位置しています。国土面積は約700平方キロで琵琶湖と同程度の大きさです。中国人、マレー人、インド人などで構成される多民族国家あるため、ほとんどの国民は母国語と英語のバイリンガルです。国民1人当たりのGDPが日本を上回ったことなどから、中国やインド同様、アジアの中でも経済成長が著しい国と言えます。

    巨大なマーライオン セントーサ島のビーチモスク

  • Nanyang Technological University(NTU)

    NTUはシンガポールにある4つの大学のうちの1つで、科学技術の分野で名が知られた大学です。シンガポールは日本以上に学歴主義であり、いい小学校や中学校に入ることが大学に入るための前提になっているらしく、親は子に対して小さい頃からかなりの教育を行う様です。親のあまりの期待の大きさに精神的に参ってしまう人もいると聞きました。また、男性は大学に入る前に2年間軍隊に所属することが一般的な様です。友人に「なぜ?」と聞くと「国を守る意識を持つため」という答えが返ってきました。これが本当の答えかどうか定かではありませんが、シンガポール人の愛国心は日本人のそれと比べ、かなり強い印象を受けました。

    話題をNTUに戻します。NTUのキャンパスは非常に広大であり、経路の異なるシャトルバスが3つも走っている程です。また、食堂の数が10個以上あり、各食堂で提供している料理も異なるため、食事に飽きることはないと思います。PCを持ち歩いている学生が多く、キャンパス内の至るところで勉強している姿が見られました。あまりに暑くて汗をかくためか、服装に気を使っている人は少なく、Tシャツ、ハーフパンツ、サンダルの学生が大半でした。それに加えて髪を染めたり、化粧をしている人も少数派でした。

  • 研修内容

    私はSchool of Computer EngineeringのCentre for Multimedia and Network Technology(CeMNet)という研究室に所属しました。CeMNetの学生の大半は他国からの留学生であり、Ph.D.取得に向けて日々研究に勤しんでいます。留学生ばかりであること、女性の数が多いこと、Ph.D.コースの学生ばかりであることなど日本の大学の研究室とは異なる環境でした。また、学生は9:00頃から研究を始め17:30頃には帰るのが一般的でした。私が20:00頃まで残っていると「なぜこんなに遅くまでいるんだ?」と言われたほどでした。一方で、現地の学生の集中力はかなりのもので、研究をしている時はほぼ無言でした(実際話かけにくかったです、笑)。優秀でメリハリのある生活ができる人ばかりだったと思います。さらに、CeMNetでは交換留学も盛んであり、私がCeMNetに来て1ヶ月後に東京工業大学に留学する学生もいました。

    このCeMNetでAsst. Prof. Wang Pingの指導の下、自身の日本での研究を進めました。内容は、異なる無線通信システム間での周波数共有を行うことにより、高品質な通信を目指そうというものです。現在のアプローチとしてヒューリスティックアルゴリズムを用いているのですが、ゲーム理論を検討してはどうかというアドバイスをいただき、関連文献をひたすら調査しました。「最新の文献を50個サーベイし、ロジカルにまとめて、30ページのサーベイレポートを書け!」と言われた時は、なんて鬼教官なんだろうと思いました(笑)。しかし、現地の学生は自身の研究を始めるために、このプロセスを行うのが当たり前の様です。その理由を聞くとかなり納得できるものだったため、課題に前向きに取り組みました。当初の求められた課題を完全に遂行することはできませんでしたが、私のできる範囲内では課題を完成させることができました。Wang Ping先生にはサーベイの仕方からご指導を頂き、研究の基礎を改めて身につけることができたこと、自身の研究への新たな知見が得られたこと、そして英語に対する嫌悪感がなくなったことなどが研修を通じて得られたことです。

    直接の研修内容とは関係ありませんが、Assoc. Prof. Lee Bu Sungに日本での研究をホワイトボードで説明し、コメントをもらったり、原稿を添削してもらったりする機会を設けて頂き、研究を進める上で大いに参考になりました。

    CeMNetの入り口 CeMNet研究していたデスク

  • 課外活動

    シンガポールの大学では8月から新学期が始まるため、ちょうど新入生が入学した時期でした。したがって、様々なクラブが勧誘活動を行っていました。私はせっかくの機会だし、交友関係を広げたいと思いクラブに入ることに決めました。入部する時に3ヶ月だけの参加であることを伝えましたが、心良く受け入れてくれました。実際、CeMNetは17:30には帰る学生が多い環境なので、週2日で3時間程度の活動による影響はほとんどなく、むしろいいリフレッシュになりました。入ったクラブはブレイクダンスのクラブです。もともと学部生の時にやっていたというのもあり、久しぶりにやりたかったというのもあります。クラブの部員は学部生ばかりで活気がありました。日本に興味を持っている人が非常に多く、特に日本の漫画やゲームが好きな人が多かったです。私はゲームには疎く、いろいろ尋ねられても答えられませんでした。周りの友人の方が詳しいくらいで「お前本当に日本人か?」とまで言われました(笑)。海外の学生と円滑に交流するためにも、もっと日本の文化について勉強する必要があるなと思いました。クラブ活動を通じて、大切な友人ができ、本当に大切な時間を過ごせました。学業に加えて、趣味の幅を広げておくことも人とコミュニケーションする上で重要だと改めて感じました。

    クラブのみんなでBBQ 先輩とのパフォーマンス後

  • シンガポールでの生活

    私は一緒に渡航した成重さんと大学の近くにある大学院生用の寮に入り、中国人でCeMNetの学生でもあるLi JiamingとそのガールフレンドのChaoの4人で共同生活をしました。到着当初はJiamingが近くをいろいろ案内してくれたり、入寮や携帯電話購入の手続きの手助けをしてくれたので、不安なくシンガポールでの生活を開始できました。

    シンガポールの観光地としてマーライオンパーク、セントーサ島、ナイトサファリ、クラーク・キーなどがあり、週末に遊びに出かけました。シンガポールは狭い国で見るところがないと言われることもありますが、私は3ヶ月いても全てを把握することはできませんでした。観光地に限らず出歩いてみると、味わい深いエリアがいくつも見つかると思います。

    次に食事に関してですが、値段はレストランなどに入らなければ、1食3$〜6$程度です。渡航時は1$=67円くらいだったのでかなりお得でした。中華料理、韓国料理、インド料理、インドネシア料理、日本料理、西洋料理など様々な国の料理を食べることができるので、3ヶ月いても全く飽きませんでした。但し、基本的に料理は辛く、飲料は甘いのでそれが嫌な人にはつらいかもしれません。

    生活する上で注意するべきこととして、室内と室外の温度差がありすぎるため、上着を持ち歩いた方がいいと思います。その他にも電車内で飲食すると罰金を払わされるなど日本よりも厳格な法律があります。しかし、基本的には日本のように治安がよく、中心部には日本人も多く住むため、シンガポールは長期滞在しやすい国だと思います。

    セントーサ島でのネオン Songs of the Seaドリアン

  • おわりに

    海外インターンシップでは英語での研究活動という貴重な経験ができました。最初は中国語なまりの英語にとまどいもありましたが、言語が何であれ、やはり会話の基本は自分のことを伝えて、相手のことを知ることだと思いました。身振り手振りのコミュニケーションも多かったですが、日常会話であれ研究の議論であれ異文化の人達と通じ合うことの難しさと楽しさを知りました。また、日本という国を客観的に見れるようになったのも大きな収穫です。まだまだ自分の甘さを痛感したので、この経験を生かしてこれからも成長していきたいと思います。

    最後に、このような貴重な経験を与えてくださった情報科学研究科・NTUの先生方、渡航前にアドバイスをくださった海外インターンの先輩方、シンガポールで親切にしてくださったみなさん、そして一緒に渡航し、自己中心的な私(笑)に付き合ってくれた成重さんに深く感謝いたします。