海外インターンシップ: CMU研修体験記(二宮 啓)
CMU研修体験記(二宮 啓)

 私は、2009年8月24日から2010年2月1日まで、アメリカのCarnegie Mellon Universityにおいて、Jessica K. Hodgins教授の指導のもと、研究を行いました。ここでは,研究内容と大学の環境、アメリカでの生活について報告致します。


■きっかけ

 私は、修士になって、せっかく研究をするのならとことん研究をやってみたいと思い、 コンピュータグラフィックスの分野で最も有名なSIGGRAPHという学会で発表することを目標にしました。 研究は、同じ研究室の沼口さんと、学部生の頃の共同研究者でカーネギーメロン大学で研究員をされている白鳥さん、 研究室の指導教官の中澤先生とともに4人で行っていく予定でした。 そんなときに海外インターンシッププログラムの話を耳にし、このプログラムを利用して、 白鳥さんのいるカーネギーメロン大学に留学し、恵まれた環境と、 コンピュータグラフィックスの専門家の方の指導の中で研究をしようと思い立ちました。 そして、8月の終わりからSIGGRAPHの締切がある1月末までの5ヶ月間の留学を決めました。 期間が長かったのですが、現地での研究に力を入れ、演習課題を現地でこなすことで大阪大学での単位の取得を認めて頂き、 また、ぎりぎり就職活動にも間に合うことから、渡航を決めることができました。



■大学の環境

 私はカーネギーメロン大学のgraphics labというところに所属していました。 graphics labは私の現地での指導教授のJessica Hodginsさんを中心にコンピュータグラフィックスや キャラクターアニメーション(人間やキャラクターの動きに関する研究分野)を研究しているところです。 私が目標にしていたSIGGRAPHへも毎年多くの論文を通し、実績を挙げています。

 graphics labでは、週に1回研究室の1人が自分の研究や興味のある論文について発表し、その内容について研究室のメンバーで 議論を行うgraphics lab meetingがありました。ここで驚いたのは、研究室の方々は自分の専門分野だけでなく幅広く色々なことに興味を持ち、 深い議論が交わされていたことでした。私もこのmeetingで自分の研究について発表し、研究についての議論を交わし、有用な意見を得ることができました。

 また、10月にはジョージア工科大学と合同でretreatと呼ばれる研究会のようなものが開かれました。 ここでは各々が現在行っている研究について発表し、SIGGRAPHのような学会に向けての議論を行いました。 このように、日本の大学に比べ、自分の研究や他人の研究について考え、議論する機会が多く、 様々なことに興味を持ってそれについて考え、自分を成長させていける環境がありました。



■研究内容

 学部生のときに人間やキャラクターの動きを解析・編集するキャラクターアニメーションという分野の研究をしていました。 この中でアニメーションを作る楽しさを知り、その楽しさを人々に伝えたいと思ったことから、 誰でも使える「人形」に注目し、人形を使ってリアルなキャラクターの動きが作れるシステムを研究しました。

 センサが中に入ったくまのぬいぐるみを作り、それをユーザが動かした時に、人形の動きをセンサのデータとして読み取れるようにしました。 そのデータからユーザがどんな動きを表現したかの認識を行い、認識結果をもとに、前もって用意した色々な人間の動きの入ったデータベースから 適切な動きを選択し、それをつなげたり、調整したりすることでユーザが望んだような動きを出力しました。

 私はこの中で主に、ユーザが人形を使って表現した動きの認識を行いました。 人形と人間の構造が大きく違うことや、ユーザによって人形の動かし方が大きく違うことから、認識が上手くいかない日々が続きましたが、色々な人に人形をさわってもらったり、研究室の様々な専門性を持つ方々に相談したり、指導教授の方と議論しながら、粘り強く色々な認識方法を試していきました。そして最終的に認識率を上げることができ、システムが完成しました。その成果を指導教授の方に認めて頂いて、目標としていたSIGGRAPHに論文を投稿できました。



■ピッツバーグ

 カーネギーメロン大学があるピッツバーグは、アメリカの北東に位置し、夏は涼しく、冬は驚くぐらい寒い都市です。 田舎だとよく言われ、遊ぶところがなく、周りに大学以外ほとんどなにもないと言われる場所です。 企業からこられている方で大阪大学出身の方が、ここはまるで大阪大学の吹田キャンパスのような場所だとおっしゃっていました。 しかし、穏やかで治安もよく、研究をするのにはうってつけな場所だとも言われています。 また、ピッツバーグは季節感を味わえる街です。私は、夏から秋、秋から冬と季節が移り変わるごとに街が姿を変えるのを見るのが好きでした。



■おわりに

 海外での研究をやり抜けたこと、そしてそれを楽しめたことが私にとって大きな自信になりました。 そしてこれは、共同研究者の方々、研究室の方々、実験に協力して頂いた方々など、様々な人の協力があったからこそ成し得たことです。 誰もいなかったら私は何もできなかったでしょう。一人では何もできないけれども誰かと協力することで大きなことが成し遂げられる、 そんな当たり前のようなことにあらためて気付かされました。
 最後に、このような貴重な機会を与えてくださった大阪大学の先生方、ピッツバーグでお世話になった方々にこの場を借りて心より感謝申し上げます。