海外インターンシップ: USM研修体験記(大野 朋重)
USM研修体験記 (大野 朋重)

大阪大学の海外インターンシッププログラムで、2009年8月1日から2009年10月29日までの三ヶ月間、マレーシアのペナン島にあるUniversiti Sains Malaysia(マレーシア科学大学)において研修を受ける機会を頂きました。ここでは、その体験についてご報告いたします。

ペナン
ペナン島はマレーシアの北西部に位置する、淡路島の半分ほどの面積を持った島です。首都クアラルンプールに次ぐ人口(約70万人)を抱えますが、自然豊かでリゾートとしても世界的に有名です。島の中心であるジョージタウンは、イギリスの統治下にあった時代の名残として洋風建築がよく見られるかと思えば、チャイナタウンやリトルインディアなどもあり、その文化の多様性から街全体が世界遺産として登録されています。マレーシアの公用語はマレー語ですが、英語の教育も早い段階からなされ、ほとんどの人は英語を話すことができます。また中華系住民は中国語も話すことができるため、マレーシアでは三ヶ国語を話すことができるという人も珍しくありません。

(写真:ペナンの風景)
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USM (Universiti Sains Malaysia)
USM(マレーシア科学大学)は1969年に創立された国立大学で、マレーシアで最も優れた大学として知られています。大学名には科学とありますが、言語学部なども持つ総合大学で、世界ランクを上げることを目標として政府から重点的に予算が配分され、また海外からの生徒の受け入れなどにも積極的です。マレー半島とペナン島をつなぐ、13kmにも及ぶペナンブリッジの近くにキャンパスがあり、熱帯植物や池、川などの豊かな自然に囲まれた、ゆったりとした雰囲気の中で学ぶことができます。マレーシアの国教がイスラム教であるためモスクもあり、キャンパス内でも文化の違いを感じることができました。

(写真:USMのキャンパス及び研究室)
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研修内容
薬学部(School of Pharmaceutical Sciences)のPhDS(Pharmaceutical Design and Simulation Lab.)に在籍しました。この研究室は薬学部ではありますが、ほとんどの学生は化学または生物学出身です。私のように情報科学を専攻されていたスタッフもいらっしゃいましたが、薬学部出身という人はいませんでした。また私の滞在期間中には2人のアメリカ人と1人のドイツ人もインターンシップを行っており、非常に国際色豊かな研究室でした。

その研究室でDr. Habibah A. Wahabのご指導の下、創薬のためのドッキングシミュレーションをグリッド環境下で行うためのポータルの開発を行いました。ドッキングシミュレーションとはタンパク質と化合物の結合の様子を計算機上でシミュレートするもので、薬の候補を絞り込むためによく用いられます。化合物数が膨大なため計算を速くするための工夫としてグリッドの技術を用いましたが、ユーザがそれを意識することなく簡単に操作できるようなインターフェースの開発をしました。薬学の専門用語などはほとんど分かっていませんでしたがそのことについて質問したり、逆にコンピュータについて質問されたことに答えたりしながら、協力して作業を進めて行きました。

ペナンでの生活
USMのキャンパスと道路を一本挟んだところにある寮に滞在しました。10階建てほどの建物がいくつも並んでおり千人単位で学生が生活する大規模なもので、安くていろいろなメニューが揃った食堂もあります。部屋はベッド・机・クローゼットがあるだけのシンプルなもので、それをPhDSでインターンシップをしていたドイツ人のMarkusと共同で使用しました。熱帯に位置するためさぞかし暑いかと思いきや、朝晩は意外と涼しく熱帯夜は全くと言っていいほどありませんでした。シャワーは水のみということもあって、エアコンが無い部屋でも慣れてしまえばそれなりに快適に過ごすことができましたが、ある日深夜1時頃に突然非常ベルが鳴り始めて周りの人に言われるがまま外に出てみたものの、結局避難訓練だったというトラブル(?)もありました。

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USMの寮の外観 キャンパス内のモスク Baju Melayuと呼ばれる民族衣装

ペナンは食の天国として知られ、マレー料理、中華料理、タイ料理、インド料理など様々なものを食べることができます。大学の学生食堂は多くがカフェテリア形式になっており、好きなものを好きなだけとることができます。通常の人は一食あたり3-5リンギット(RM; RM1は約30円)前後を費やしますが、おいしそうなものがたくさんあったためRM10ほど使ってしまうこともしばしばありました。

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点心アサム・ラクサ(麺料理)

文化
先述のようにマレーシアにはイスラム教徒が多くおり、USMでもイスラム教の慣習に触れる機会が多くありました。最も印象に残っているのはやはりムスリムの断食月であるラマダーンです。滞在期間に重なっていたためムスリムの友人とともに断食に挑戦しました。朝5時頃友人の電話で起き一緒に朝食を済ませたら、朝6時頃から夜7時過ぎ頃(日によって異なります)の間は一切の飲食をやめます。ラマダーン中はこの断食終了時刻(ファストブレイク)に合わせ、USMのモスクでは無料でアラビア料理が振る舞われます。モスクでは服装や立ち入り可能範囲に制限はあったものの、ムスリムの皆さんは暖かく迎えてくれました。また、夕方から路上に屋台も多数出されます。1日だけ断食をしなかったため後日代わりに行うという形をとったものの、1ヶ月間の断食を成し遂げることができました。
ラマダンが終わるとハリラヤという大きなイベントがあります。これはイスラム暦上での新年に相当し、至る所で盛大なお祝いがなされます。

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ナイトマーケット

おわりに
この海外インターンシップを通じて貴重な経験を積むことができました。大阪大学では周りはほぼ全員が情報系出身ですが、異なるバックグランドを持つ学生・スタッフの方々との交流により視野を広げることが出来ました。同時に、滞在期間を通じてコミュニケーションの手段としての英語の重要性と、それを学ぶ必要性を痛い程実感することになりました。しかし、月並みな言い方ですが、国境を越えて様々な人と出会い交流できたことは非常に楽しく、かけがえのない経験となったと思います。

最後に、このような貴重な機会をくださった大阪大学とUSMのスタッフの方々、マレーシアでお世話になった先生、学生、スタッフの皆様に心よりお礼申し上げます。

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