WPI 研修体験記 (大西 崇之)

はじめに

私は、2010年9月15日から2010年12月15日までの約3ヶ月間、アメリカのマサ チューセッツ州にある Worcester Polytechnic Institute(ウースター工科大 学)においてLindeman教授の指導のもと、研究を行わせていただきました。こ こでは、その体験についてご報告いたします。

海外インターンシップへの応募

私の場合、海外インターンシップへの応募自体は割と早い段階で考えていたと 思います。私が学部4回生の時、留学生でドクターの先輩が私の卒業研究の面倒 を見てくださったのですが、コミュニケーションは基本的に英語で行う必要が あり、元来それが苦手だった私はなんとも歯痒い思いをしていました。そんな 折、この海外インターンシップで渡航した研究室の先輩方の体験談などを聞き 「これはチャンスだ!」と思い、語学力の向上だけでなく、見聞を広めようと 海外渡航を決心しました。

実際に私が一人で海外に行って活動できるのか、海外インターンシップが終わっ たあとも大学院での学業を支障なく続けられるのか等の不安はありましたが、 過去の実例を先輩が作ってくださったことで確信が持てました。渡航先を決め るにあたっては、私の所属する研究室にインターンシップとして逆に海外から 留学生が多く来ており、彼らの所属する大学について話を聞けたことなどが最 終的な決め手となりました。

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行きの飛行機の中から

ウースター

ウースターはアメリカの東海岸に位置する都市で、マサチューセッツ州の中央 に位置します。近くにはアメリカ独立のきっかけの地となったボストンがあり ます。ボストンでは多数の有名大学が集まっていますが、ウースターでも有名 私立大学などが存在しています。

街並みはとてもきれいで、そこかしこにリスがたくさん生息していたことが印 象に残っています。また、これはアメリカのほぼ全土に共通することと思いま すが、通りとブロックの関係が整っており、日本にいた時ほど地図を見ながら 迷うということは少なかったように思います。大学周辺には博物館がいくつか あり、少し変わったものでは鎧と武器の博物館などもありました。

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ウースターの街並み

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横断歩道上にて

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色々な場所で見られるリス

WPI (Worcester Polytechnic Institute)

私が訪れたのはウースター工科大学です。受け入れを担当していただいた准教 授の方が言っていたのですがウースター工科大学は特殊で、多くの学生はイン ターンシップで学外体験をすることが課され、海外へのインターンシップも盛 んに行われています。私の研究室にも、この一環で留学生が7人来て、4ヶ月間 のプロジェクトを行っていました。また、協調作業としてのプロジェクトの数 がとても多く、複数人のグループで課題をこなすということも日常的な光景で した。

他にも面白いものとしては、IMGD(Interactive Media and Game Development) というゲーム開発に関連する部門が存在するということです。また、大学間で の協調も進んでおり、私が出会ったうち何人かの学生は、ウースター工科大学 にはない講義を近隣の大学で受けていると言っていました。

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エントランス

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大学のマスコットの羊

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キャンパス内にそびえ立つ木

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グラウンド

研修内容

ウースター工科大学では、HIVE(Human Interaction in Virtual Environments)という研究室でお世話になりました。私の面倒を見てくださった 准教授の方は仮想現実やインタフェースなどの分野が専門でしたが、このHIVE では他にもロボット工学や、コンピュータビジョンなどの背景を持った人たち も研究をしていました。研究生の中には留学生も多く、ブラジル人、ノルウェー 人、中国人、トルコ人と国際色も豊かでした。ちなみに余談として、研究室の 学生は基本的に夕食を迎える前に研究室を後にするのですが、やはりアジア系 の留学生は夜遅くまで研究室に残っている傾向があり、国(地域)柄なのかな と思ったこともあります。

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研究で使われていたロボット

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風を送るファンが設置されているケージ

海外インターンシップ期間中では、受け入れをしてくださった准教授の方と、 日本にいる准教授の先生を交えたミーティングを行って研究の方針を固めまし た。取り組んだテーマは、三次元領域を選択するという三次元インタフェース の開発です。関連研究として磁気センサを複数用いたものがあるのですが、操 作に付随する疲労度などの優位性を考慮し、本研究ではマルチタッチデバイス を複数用いてシステムのハードウェアを構築しました。この研究はボリューム レンダリングの可視領域の選択や三次元空間内に存在する複数オブジェクトの 選択などの応用が考えられます。

実際には、まず関連論文のサーベイを行いつつ、研究テーマと方針を先生方と 討論の上決定しました。その上でプログラムの実装を行い、ユーザが複数のタッ チデバイスに指を置くことで直方体状の三次元領域の定義や、回転・移動など といった操作が行えるようなシステムを構築しました。システム構築後は、空 間内のオブジェクトを選択してもらうというタスクのもと、被験者に当該シス テムを実際に利用してもらい、フィードバックを集めました。

システム自体、二次元上の操作を三次元上の操作にシフトさせていたり、操作 対象を選択する方法にやや直感的でない方式を採用していたこともあり、慣れ るまでの時間が必要という意見が挙げられましたが、新しい方式に可能性は感 じるということが被験者のコメントでは一貫していました。インターンシップ の期間中には研究での成果をまとめ、3DUIという国際会議にショートペーパー を投稿しました。

生活

現地について5日間ほどは、International Houseという留学生が借りられる住 居で寝泊りをしていましたが、幸運にもキャンパスから5分もかからない場所で ルームシェアの提案があり、その後はずっとそこで暮らしていました。ルーム メイトは中国人とインド系アメリカ人で、年齢の近い人と共同生活を送るとい うことがなかったのもあり、新鮮な経験でした。そういえば、アメリカの住居 は基本的にオートロックで、一度鍵を持たずうっかり外に出てしまい、寒い中 ルームメイトまで鍵を借りに行ったことがあります。

学業以外の活動としては、ESL(English as a Second Language)という英語学習 のクラスを自費で受講していました。授業自体は生徒の人数が多かったため日 本で受ける授業とそれほど違いはありませんでしたが、驚いたこととして、受 講している生徒の9割は中国人でした。実は中国人留学生の多さはこのクラス だけでなく、見た目が日中韓のアジア人に出会ったら十中八九は中国人留学生 という状況で、彼らの熱意の強さを感じたことを覚えています。

ところで、現地で合う人には毎回「すごく寒いから気をつけて」と言われるほ ど冬のウースターは寒いのですが、私が行った年はたまたまずっと暖かく、ま た暖房設備も整っており快適な生活を過ごすことができました。現地を去る前 日に初めて雪が降ったのを、感慨深く覚えています。

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生活の拠点となった寄宿舎

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近くにあるのどかな公園

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キャンパスから見た通り

文化

文化について私が言いたいのは、人々の「マナーがいい」ということです。私 は、「日本人はマナーがよい」と思っていたのですが、これは「ルールを尊守 する」という表現が近いのではないかな、とアメリカでの生活を通して思うよ うになりました。つまり、列にも並ぶし、お辞儀もきちんとする。アメリカで 出会った方々は、その"先"がありました。

たとえば、ドアを開けたら、後ろに続く人が通れるように持っておいてあげた り、あるいは先に人を通してあげたり、ということです。もちろんこれは些細 な例ですが、色々な何気ないしぐさで、誰かの助けになることが嬉しいという マインドを感じました。

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建物

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線路

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チョコレート入りクッキー

おわりに

海外で研究生活を送り、論文投稿など実際にやり遂げたということは、大きな 自信に繋がったと思います。滞在中での触れ合いを通じ、コミュニケーション における核というのは、国内外を問わないということを確信しました。しかし、 国外で実際に生活をすることで、今まで意識していなかった多くのことを考え させられました。渡航中に報道された国家間の衝突などのニュースも、国内よ りも身近な問題と感じられたことを覚えています。

海外に身を置くことで、日本のあり方などを改めて考えることもありました。 海外に行くことは、グローバルな視野を得るためとも聞きますが、それは目を 海外に向けるだけではなくて、それによって日本を相対的に見ることができる ということが大事なのではないでしょうか。

最後になりましたが、今回の海外インターンシップは本当に色々な方々の協力 の上で行うことができました。このような貴重な機会の提供と、手厚い支援を してくださった大阪大学とウースター工科大学の職員ならびに先生方、また渡 航先でお世話になったすべての方々に、心より感謝申し上げます。

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VRチームのメンバと