USM 研修体験記 (上田 大介)

はじめに

大阪大学の海外インターンシッププログラムで、2010年8月2日から2010年10月 29日までの約3か月間、マレーシアのペナン島にあるUSM(Universiti Sains Malaysia) において研修を受ける機会を頂きました。ここでは、その体験につ いて報告いたします。

ペナン

ペナン島はマレーシアの北西部に位置する人口がおよそ70万人という、首都ク アラルンプールに次ぐ人口を抱えた島です。この島はマラッカ海峡に近いこと から古くから交易の要所として栄えてきました。ペナンの中心地であるジョー ジタウンにはイギリスの植民地時代に建造された建物が今でも残っており、現 在ではその歴史的価値が認められジョージタウン全体が世界遺産として保存さ れています。さらにこの島では華僑たちを積極的に受け入れたため現在でも中 華系の人口比が高いという特徴があります。そのような背景もあってか公用語 であるマレー語はもとより、中国語も幅広く使われています。英語にいたって は早くから教育が行われ大学の講義は英語で行われています。

ペナンの風景

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USM (Universiti Sains Malaysia)

Universitiは「大学」、Sainsは「科学」を意味するマレー語で、USMはマレー シア科学大学という意味になります。科学大学という名を持ちながらも現在の USMは社会学、教育学などの研究科も持つ総合大学であり、国内ではマレーシア 大学に次ぐ規模を持つ国立大学となっています。そして研究機関としてのUSMの 競争力の向上を次のミッションと掲げ、海外からの留学生の受け入れなどが盛 んに行われています。キャンパス自体も大きく、自然を大切にする精神のため か広大なキャンパスには様々な植物が生息しています。また水辺にはオオトカ ゲが棲んでいて南国情緒あふれる風景が見られます。

キャンパス内の動植物

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研修内容

私がお世話になった研究室はPharmaceutical Design and Simulation Lab(PhDS)という名で創薬に関するシミュレーションから実際の化学的実験まで を行う研究室でした。

創薬の分野では薬になりそうな化合物を自然界から探すだけでなく、既に存在 が確認されている化合物から薬になりそうなものを見つけるということが行わ れます。そのような既知の化合物はデータベースに登録されており、化合物の 総数は数千万にもなります。膨大な化合物の中から薬になりそうなものを探す ためには、あるタンパク質とそれぞれの化合物が結合するかどうかをシミュレー ションにより確かめる必要があります。シミュレーション自体も時間のかかる 処理であるために、最終的な結果を出すためには高速な計算環境が必要になり ます。さらに、このようなシミュレーションを実行するのは薬学や生物学・化 学を専攻する人たちであるため計算機に対する知識も違えば、欲している結果 も異なります。そのため利用者の要求に応じてシミュレーションを行うシステ ムが強く要求されています。

このような背景から私は高速な計算環境と目的に応じたシミュレーションを行 うシステムを開発しました。まず、計算環境として複数のコンピュータを組み 合わせるコンピュータクラスタを導入し、GUI、CUI両方でのシミュレーション を提供できるようにしました。GUIによる操作はGridsphereを用いて実装し、複 雑な処理の隠蔽と結果のグラフィカルな表示(タンパク質と化合物の結合な ど)を実現しました。CUIによる操作は、シミュレーションの複雑な前処理やク ラスタシステムの管理を利用者に求めないように設計し、詳細な結果を利用者 が参照できるようにしました。クラスタを導入することでシミュレーションの 処理時間が短縮され、インターフェースを改良することでシミュレーションの 可用性を高めることに成功しました。

特徴的な気候

1年を通して温暖な気候が日本との生活の違いを多く生んでいました。ペナンは 毎日が最高30度を超える熱帯に位置するため、地元の人が利用する食堂のよう な所は壁のないところが多く、冬の冷え込みを考える必要がないのだと感じま した。さらに毎日のように激しい雨に襲われ、昼食を食べに出たものの雨のせ いで帰れないということもありました。このような雨は予測できないそうで、 ペナンでの天気予報は基本的にあてにならないそうです。熱帯と言っても、太 陽が出ているのは朝の7時から夜の7時ごろまでで頻繁に雨が降るためか、気温 はせいぜい34度程度でした。もちろん暑いのですが、2010年の日本は39度を超 えるところもあったそうで、ひょっとするとペナンの方が過ごしやすかったの かもしれません。

南国風景

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ペナンでの生活と文化

ペナンでは主にマレー系、中華系、インド系の人たちが生活しているため、様々 な文化が日々の生活の中に影響を与えています。例えばイスラム教はマレーシ アでも広く信仰されている宗教ですが、断食月であるラマダーンにはイスラム 教徒は日が出ている間何も食べません。こう書くと断食月は彼らにとって非常 に苦しい期間のように聞こえますが、私の目からはあまりそうは見えませんで した。むしろ日が沈むと食べることができるので、毎日夜の7時ごろになると多 くの屋台が並び、大勢の人が集まってにぎわっているほどでした。それから深 夜まで友人といくつかのお店を”はしご”したり、遊びにいったりと断食月は 断食月で楽しんでいるようにすら見えました。

また、秋になると”仲秋”があります。これは中華系の人の文化で、日本とは 違って彼らは月餅を食べます。そのためこの”Mid Autumn Festival”を”Moon Cake Festival”と呼んでいる人もいました。

イスラム教のモスクと仏教の寺院

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おわりに

今回の海外インターンシップで多くのことを学ぶことができました。海外での 研究開発を通じて他の大学・研究室の風土、私の場合は薬学部という異なるバッ クグラウンドであるということも含めた、多面的な刺激を受けたと感じていま す。また英語を通したコミュニケーションでいろいろな国の人たちと交流した 経験は、自信と反省という形でこれからの自分の成長の糧になることだろうと 思います。

最後に、海外インターンシップの機会を与えてくださった大阪大学とUSMのスタッ フの方々、現地での生活でお世話になったすべての方に心からお礼を申し上げ ます。

USM 学生・スタッフの方々と

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