WPI 研修体験記 (濱田 啓一)

はじめに

大阪大学の海外インターンシッププログラムで、2011 年 8 月 28 日から 2011 年 11 月 24 日までの約3ヶ月間、アメリカ合衆国のマサチューセッツ州 にあるWPI(Worcester Polytechnic Institute、ウースター工科大学)において 研修を受ける機会を頂きました。ここでは、その体験についてご報告いたしま す。

ウースター

ウースターはアメリカ合衆国マサチューセッツ州中央部に位置する都市であり、 州都であるボストン(約60万人)に次ぐ約17万人の人口を持っています。言語と しては、英語のみならず、ヒスパニック系の方も多いせいか、スペイン語もあ りました。ウースターはボストンから西へ車で約1時間、電車で約1時間半かか ります。ボストンにはハーバード大学やMITといった有名大学が数多くあります が、ウースターもボストンと同様、ホーリークロス大学、クラーク大学、私が 研修を行ったWPIなど全米大学ランキングトップ100位以内に入る有名大学が存 在します。ウースターは、通りとブロックが整備されており、比較的きれいな 街であると同時に、リスが多いこと(これは全米で言えることかもしれません) が印象に残っています。

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ウースターの風景

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ウースターにある公園

WPI(Worcester Polytechnic Institute)

WPIは1865年に創立された私立大学で、全米大学ランキングは62位(U.S.News調 べ)と全米の中でも有名な大学の1つであります。学生数は約5,000人(学部生:約 3,700人、大学院生:約1,600人)であり、大学規模はそれほど大きくはありませ ん。学生の中では、アメリカ人はもちろん、中国やインド、イランなど様々な 国から正規生として入学している方が多く見られました。また、大学院生の中 には仕事をしながら通学されている方も多いせいか、早い時間(午前中、及び 15:00過ぎまで)は学部生向けの授業が、それ以降は大学院生向けの授業が行わ れています。

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WPIのマスコット

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研究室のホワイトボードには様々な言語が書いてあり、インターナショナルな雰囲気

研修内容

WPIでは、Computer Science専攻のProf.Charles Richが指導する研究室でお世 話になりました。Prof.Charles Richの下に所属する学生は、人間とバーチャル ロボットとのインタラクションに研究しています。学生が研究している部屋で は、同研究室のメンバー以外に、ロボット工学について研究をしている学生や RPGなどのゲームについて研究している学生がいました。また、中国人やブラジ ル人、トルコ人、イラン人など国際色豊かであり、色々な意味で多彩な研究室 であるといえます。

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ロボット"Melvin"

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別研究グループが使用していたロボット

その研究室で Prof.Charles Rich, Prof.Candace L. Sidner のご指導の下、 "Always-On Relational Agents for Social Support of Older Adults"プロジェ クトに参加し、人とバーチャルエージェント・ロボットとの関係構築に関する 研究、及びシステム構築を行いました。近年、お年寄りの1人暮らしが増加して います。1人暮らしのお年寄りは外出する機会が減り、他人とのコミュニケーショ ンが少なくなってしまい、脳の退化速度が早まるということが挙げられます。 つまり、他人とコミュニケーションを行うことで、脳が活性化され、年齢を重 ねても健康に生活を送ることができます。

以上のような背景から、1人暮らしのお年寄りの健康維持を目的に、人間が在宅 中に常に会話可能なバーチャルエージェント・ロボットの開発を行っています。

このプロジェクトで私は、人間と会話するために必要な会話トピックにおいて、 アメリカで最も有名なスポーツである野球のトピックについての会話構造の構 築を行いました。野球はシーズン中は毎日行われており、情報が日々更新され るため、予め会話の流れを構築することができないという課題があります。そ こで、私はWeb 上から野球情報の取得・分析を行い、その結果に基づいて会話 の流れを構築しました。また、会話の内容の1つとして、ユーザが応援するチー ムに関するニュースについて取り上げており、できるだけ有益なニュースをユー ザに伝える必要があります。そこで、ニュースの重要性とその見出しに用いら れている単語を分析した結果から作成した単語リストを基に、ニュースに対し ランキング付けを行い、ランキングの上位から表示させることにより、ユーザ に有益なニュースを提供することが可能となりました。

システム全体はまだ開発中でありますが、完成後は1人暮らしのお年寄りの家に 約2ヶ月間配置され、健康維持に効果があるかどうかの検証が行われます。

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利用者が見る画面の一例

生活

現地では、私のようなWPIに数ヶ月程度の研修に来られている方とルームシェア をしており、大学から徒歩数分の場所に住んでいました。ルームメイトは、中 国人の先生とアメリカ軍に所属しているアメリカ人で、普段では一緒に生活す ることのないメンバーと生活することができ、とても新鮮でした。

気候は、夏の終わりから秋に留学したということもあって、比較的過ごしやす かったです。しかし、10月下旬に降った雪の影響で、裏庭の電線が切れ、1週間 ほど停電してしまい、生活が一時的に大変になったのは、良い経験でした。

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雪が降った時のシェアハウス前の道路

インターンシップ期間中、上記の研修以外に研究室ゼミや大学院生向けの授業 を2つ聴講していました。1つの授業は、HCI(Human Computer Interaction)とい う授業で、人間とコンピュータのインタフェースやインタラクションについて の勉強を行いました。もう1つは、Colloquiumという授業で、Computer Science専攻の先生や外部講師の方がオムニバス形式で自身の研究について紹介 する授業です。どちらの授業でもいえることですが、こちらの学生は授業中に 質問のみならず、内容に対して自身の意見も述べる、及びコメントもしており、 積極的な姿勢に感嘆しました。また、Conversation Programというネイティブ の学生と1対1で会話練習ができるプログラムを自費で受講していました。

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授業Colloquiumにて

文化

私が感じたことは、こちらの学生はとにかく積極的だということです。自由に 生きていける国に生まれたが故に自分の力で生きていく必要があると同時に、 他人が手を差し伸べてくれることはほとんどないということです。そのため、 他人の手が必要ならば、自分から質問をする、自身の意見をぶつける、などの 積極性が必要です。また、アメリカに正規留学している中国人や韓国人などの 学生は自己成長するために積極的に質問をしており、熱意の高さを今でも覚え ています。

おわりに

この海外インターンシップを通じて、日本では積むことのできない貴重な経験 を数多く積むことができました。私が日本で所属する研究室は、中国人と日本 人で構成され、日本語で会話できる環境です。しかし、WPIの研究室では国際色 豊かであり、異文化コミュニケーションをすることを通して、グローバルに視 野を広げることができたと同時に、コミュニケーションの手段としての英語の 必要性、それを学ぶ必要性を痛感することができました。これらの経験は、今 後の研究活動だけでなく、社会に出てからも生かされると思います。

最後に、このような貴重な機会をくださった大阪大学とWPIでお世話になった先生、 学生、スタッフの皆様に心よりお礼申し上げます。

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研究グループのメンバーと