研修体験記(西山浩太郎)

はじめに

大阪大学の海外インターンシッププログラムで、2011 年 11 月 21 日から 2012 年 1 月 31 日までの三ヶ月、オランダの University of Groningen にお いて研修を受ける機会を頂きました。ここでは、その体験についてご報告いた します。

フローニンヘン

フローニンヘンはオランダの北東部、ホーランド州の州都で、フローニンヘン 大学のキャンパスが点在している大学都市です。フローニンヘンは自転車の街 といわれており人口よりも自転車の台数が多いと言われています。大学都市で あるため、様々な国から学生が街を訪れる国際色豊かな街でもあります。オラ ンダの人々は小学校~中学校でオランダ語と英語、高等学校ではドイツ語また はフランス語を学ぶため、公用語はオランダ語ですが街では英語が通じます。 (写真 : フローニンヘンの風景)

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フローニンヘンの風景

フローニンヘン大学(RUG)

フローニンヘン大学は16141年に創立され、オランダで2番目に古く、3番目に大 きな大学です。また日本の多くの大学と交流がありHPには日本語ページもあり ます。

大阪大学との交流が深く、Zernikキャンパスには大阪大学欧州教育研究センター があります。キャンパスはフローニンゲン市内に点在しており、全てのキャン パスはフローニンゲン中央駅から簡単にアクセスできます。(写真 :RUGのキャ ンパス及び研究室)

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RUGのキャンパス及び研究室

研修内容

Bioinformatic centre(GBiC)に在籍しました。ここは理学部と薬学部に属する ため、生物学・薬学部出身の人もいれば、数学科やコンピューターサイエンス 出身の人もいるというところでした。研究室というよりも研究チームごとにキャ ンパス・部屋が違いました。様々な人種の人達がおり、留学生・インターンシッ プの受け入れに非常に積極的で、国際色の豊かな研究室でした。その研究室で Ph.DのDanny Arends指導の下シロイヌナズナの量的形質座位(QTL)解析を行いま した。量的形質座位とは量的形質がどのように生物に表現されるかに影響を与 える染色体上のDNA領域です。シロイヌナズナのタイリングアレイデータを元に 解析を行いました。タイリングアレイはDNAチップの一種で解読済みのゲノムデー タから等間隔に抜き出した塩基配列を検出用プローブとしてタイル状に並べて います。そしてDNAとプローブの結合の強弱または結合するかしないかで遺伝子 の発現量などを測定する方法です。このため、タイリングアレイでは新規遺伝 子を発見することが可能です。しかし、得られるデータ量が非常に多いためノ イズも多いという欠点があります。

このノイズを抑え、かつデータから得られる分解能を保持して解析する方法が ないかという検討を行いました。注目したのはメタボロミクスなどで使われて いるセントロタイピングという手法です。この手法は主にマススペクトル解析 などでデータ量、実験データのノイズ抑制に用いられる方法です。そこでまず 一つの遺伝子をターゲットとしている全プローブの発現量の生データの相関を 取り、そのLOD-score(logarithm of odd score)を用いるという方法を取りまし た。理論上では機能すると思われたのですが、実際にはデータが持つ分解能が 失われてしまっていました。そこで一つの遺伝子をターゲットにしているプロー ブをLOD-score基づいてクラスタリングを行いました。その結果プローブはいく つかのグループに分けることができることがわかりました。そこでそれぞれの プローブについてLOD-scoreを取り、最もLOD-scoreが高いプローブと相関が高 いものを集め、そのプローブのexpression valueの平均値をとったものをセン トロタイププローブとすることにしました。相関のカットオフ値はcor > 0.5と しました。この方法を用いたところ発現量の低いマーカー遺伝子のLOD-scoreは 低く抑えられ、発現しているマーカー遺伝子のLOD-scoreは高くなり、ノイズを 抑制できていました。またセントロタイピングを行ったことで5%FDR(false discovery rate)のLOD-scoreが8から6になり、ノイズによって見えなくなって いた情報が得られるようになりました。しかしこの方法はまだ改善の余地があ るため、さらなる改良が求められます。一つにはセントロタイピングの方法が 適切であったか。さらにこの方法を用いるのであれば相関のカットオフ値は一 律に同じ値というのが適切であるのか、検討する必要があると思われます。ま たこれを行うにあたって行った遺伝子注釈のチェック作業にて新しい転写領域・ 遺伝子と思われる領域を発見しました。その領域が本当に新しい転写領域なの か、遺伝子なのかはまだまだ様々な視点からの解析が必要になりますが、少な くともデータバンクでは遺伝子注釈欠けている領域なので、データバンクに新 しい情報を追加することもできました。

フローニンヘンでの生活

キャンパスから自転車30分ほどの留学生寮に滞在しました。もっと近くの寮も あるんですが、部屋が空いておらずその寮になりました。オランダは冬は非常 に気温が低くなりますが、暖房器具はパイプのようなものに熱湯を流すという 器具でした。

また窓は二重窓になっており、外は寒いが寮内ではTシャツ一枚で過ごせるほ ど暖かくなっていました。オランダでは夕飯以外の食事は簡単に済ませるのが ふつうで、学食ではパン(ハムやチーズが挟んである)とスープというスタイ ルでした。オランダでは平日でも夜の6時くらいにはほとんどのお店が閉まり、 日曜日はほとんどのお店が終日閉店です。木曜日の夜は学生デーとなっており、 バーではドリンクが半額で提供されます。オランダのバーでは食べ物はほとん どメニューにありません。飲みに行くときは家で夕飯を済ませてから飲みに行 きます。移動は基本的に自転車です。中心地などでは自動車は入れないように なっているところも多く、歩行者と自転車のみが入れるようになっています。

文化

僕はちょうどクリスマス~新年の期間にオランダに滞在していたので、オラン ダ独特のお祝いの仕方を見ることができました。オランダでは新年には爆竹を 鳴らしてお祝いします。また12/31~1/1の夜には家から花火を打ち上げてお祝 いするので、非常に賑やかな新年を迎えます。普段は花火は使用が禁止されて いますが、この時期だけ使用の許可が下りるそうです。

おわりに

この海外インターンシップを通じて貴重な経験を積むことができました。大阪 大学では研究室にいる人は大きく分ければ同じバックグラウンドですが、異な るバックグラウンドの人達と討論を重ねることで違った視点から生物を見るこ とができました。また、英語で日常会話するために必要な英語レベルと研究に ついて議論するために必要な英語レベルの違いを痛感し、英語学習の必要性を 大きく感じました。

最後に、このような貴重な機会をくださった大阪大学情報科学研究科と自分を 受け入れてくれたGBiCの皆さん、お世話をしてくれたDanny Arendsに感謝しま す。