UCSD 研修体験記 (大熊 祐太)

はじめに

大阪大学の海外インターンシッププログラムで, 2011年8 月24日から2011年11月18日までの約3ヶ月間, アメリカ合衆国カリフォルニア州サンディエゴにあるUniversity of California, San Diego(UCSD)に滞在し, 研究を行う機会を頂きました。ここでは, その体験についてご報告いたします.

サンディエゴ

サンディエゴはアメリカ合衆国カリフォルニア州の南部に位置し, メキシコとの国境に非常に近い街である. そのため, 表記には英語と並んでスペイン語が書かれており, いたるところでメキシコ料理を見かけるなど文化の面でメキシコの影響を強く受けています. 普通サンディエゴと同緯度の地域では夏場はかなり暑くなるはずですが, 西海岸沿いを流れる寒流と海から吹く風の影響でそれほど気温が高くなることはありません, さらに, 湿度も低いため日陰に入るだけでも涼しく非常にすごしやすい気候です. また, 夏はほぼ雨が降らずどこへ出かけるにも天気の心配がいりません. 冬は雨季となり気温も少し下がりますが日本のように冷え込むことはなく年中を通してすごしやすい気候であると言えると思います. 街の治安も非常によく, 安心して生活することができる都市でした.

図1:サンディエゴダウンタウン

University of California, San Diego(UCSD)

UCSDは1959年に創立された比較的新しい大学です. しかし, 現在では全米州立大学トップ10に入るほどの大学に成長しています. 特に理系分野に強く, 医学・生物学・海洋生物学・工学などの分野においては世界的評価を得ています. 大学の規模は, 学生・職員等をあわせて3万人と非常に大規模で, それに応じて敷地も非常に広大です. 学生は様々な地域から集まってきており, アメリカ人はもちろんアジア系, ヨーロッパ系, 中東系の人など多種多様です. そのため, 食堂や施設も非常に多く学生は不自由なく生活することができます.

図2:UCSDのメインストリート

研究内容

私は, タンパク質のドッキングに関する研究を行いました. 現在, 創薬の分野ではコンピュータを利用した創薬が行われており, その中にタンパク質のドッキングシミュレーションがあります. 従来, すべてのタンパク質の組み合わせに対して実験を行なっていましたが, それでは時間とコスト面でかなり無駄が生じます. そこでコンピュータ上にタンパク質のデータを用意し, それらのドッキングシミュレーションを行うことで時間とコストの削減を行えるのがコンピュータを利用することの利点です. 今回は, SSH2(Protein phosphatase Slingshot homolog 2)と呼ばれるタンパク質に注目し, それに対する化合物のドッキングシミュレーションを行い, さらにクラスタリング等を実行することでその後の実験に役立つようにデータを作成しました. 以下が研究の全体の流れです.
1. 対象のタンパク質データ(SSH2)とリガンドデータを用意し, SSH2に対する2種類のドッキングシミュレーションを行う
2. 2種類のドッキングシミュレーションの結果を統合し, 1つのランキングを作成する.
3. 2で作成されたランキングから必要な部分を抽出
4. 抽出されたリガンドについてクラスタリングを実行し, どのリガンドが似た構造を持つのかを明らかにする
5. クラスタ内のリガンドの構造を視覚化し, 比較を行えるようにする.

右下の画像はSSH2の三次元構造の図です. この構造のどこにリガンド(左下図. 実際にはリガンドはSSH2に比べて小さい)がドッキングするのかをシミュレーションします.

図3:リガンドの構造               図4:SSH2の構造

ドッキングの結果はそれぞれスコアとして表されます. そのスコアによってSSH2とリガンドの結合の強さが表されます. これまでにもドッキングの結果をクラスタリング等で見やすくしようと試みられてきました. しかし, 図5のように非常に結果がわかりにくくなっていました. そこで, 次にクラスタ内のリガンドがどのような構造を持っており, どれぐらい似ているのかを見ることができるようにしました.

図5:クラスタリングの結果                図6:クラスタリングの視覚化

図6は今回の研究でのクラスタリングの結果です. それぞれの円が1つのリガンドを示し, 同じ色の円は同じクラスタに属していることを表します. 軸は距離をそれぞれの距離を表しています. さらに, 同一クラスタ内のリガンドの構造を比較します.

図7:2つのリガンドの構造比較

2つの構造の赤い部分が最も似ている部分を表しています. 図7のZINC~となっている部分がリガンドの名前, rankとなっている部分が総合ランキングでの順位を表しています.これにより, ランキングに影響を与える構造は黒い部分となることが分かります.

おわりに

以上でサンディエゴでの生活, 研究内容についての紹介を終わります. このインターンシップにおいて様々なことを学ぶことができました. アメリカは様々な人種が集まっており, そのため生活や価値観等異なることが多々あります. そうした中で経験した出来事は日本では経験できないことですし, 将来何かの仕事をするときにも役に立つことであるだろうと思います.
最後に, 海外インターンシップの準備等でお世話して下さった松田教授, 研究室の方々, また, UCSDでお世話になったJason Haga氏, Peter Arzberger氏, Teri Simas氏に深く感謝いたします.