小泉 佑揮

Profile
小泉 佑揮Yuki Koizumi
情報ネットワーク学専攻 情報流通プラットフォーム講座 准教授
研究内容について教えてください。

僕のメインの研究は二つあります。一つめがパケット転送です。IPネットワークの機能は、ある地点からある地点へパケットを運ぶ経路を決めるルーティングと、ルーティングで決めた経路にしがってパケットを運んでいくフォワーディングの二つに分かれます。そのフォワーディングをいかに速くできるか。世界一速いフォワーディングを目指そう、というのが一つめの研究です。
もう一つがプライバシーです。エドワード・スノーデンがアメリカの大規模監視網について暴露したあたりから、インターネット上におけるプライバシーの重要性がより注目されるようになりました。そうした中で、プライバシーを保護できるインターネットを目指そう、というのが二つめの研究です。
安全なインターネットと、速いインターネット。この二つが長谷川研究室の二大テーマだと思っています。

Hさん 学部時代に受講したゼミナールの授業のうちの一つがネットワークで、もう一つが機械学習でした。そこで、パケット転送がネットワークのコアになっていることを知りました。「世界一速いルーターをつくろう」という研究は簡単に言うと機械学習をパケット転送に適用する、というものなので、ゼミナールの内容が活かせて面白そうだと思い、研究テーマに選んで、小泉先生と研究させて頂いています。
先生の学生時代についてのエピソードや、研究者としての道を選んだ経緯を教えてください。

実は、早く社会に出て働きたいと思っていました。飛び級で大学院に進学し、少しでも早く卒業して働こうと思っていたんですね。ただ、飛び級で大学院に進学すると、入学して一年経たないうちに就活しないといけない。ちょうど研究が面白くなってきていたのに、もう就活?と物足りなくなってしまったんですね。それなら研究に舵を切り、博士課程まで行ってもいいかもしれない、と思って博士課程に進んで、今ここにいます。

僕が学生の時に比べたら、今の学生は本当に真面目だと思います。ただ、今しかできないこと、卒業したらできないこと、があることを理解して、時間を無駄にしないで欲しいと思います。

正直なところ、学部生時代の僕は勉学に対して高い志があったわけではなく、そのとき一番やりたいことを集中してやってきました。大学時代はバイクに夢中でしたし、勉強するよりもバイクを走らせていた時間の方が多かったと思うくらいです。その分、大学院に入って、切り替えて勉強に集中しました。
学生には、そのようにメリハリを持って自分の研究や、人生を意識してほしいと思っています。自分にとって最も有意義なことに、人生を集中してほしい。そうすれば就職するにしても、研究を続けるにしても、決断を迷わないと思います。
小泉先生の教育研究活動に対する考え方を教えてください。
アインシュタインの様々な格言が好きなのですが、教育についても好きな言葉があります。それは、「教育とは、学生たちが学校で学んだことを全て忘れた後に残るものである」というものです。授業は残念ながら、知識を教える以上のことは難しいので、知識を教えることに集中しています。それが将来の学生の研究の糧になれば良いという気持ちでいます。

一方、研究活動では、実際に研究しているトピックそのものを教えるに留まらず、物事の考え方や、研究を通してこのあと学生が人生を生きていくうえでの考え方を醸成するという役割があると思います。そうした役割の違いがあるので、研究のときと授業ではアプローチが違いますね。単に知識を植え付けるのではなく、学生が社会で生きていくうえでの考え方を身に着けてもらったり、経験をさせてあげたいと考えています。

大学における研究は、研究と教育のバランスを取るのが重要であり、そこが難しいと感じています。まず、研究において世界のトップにならないと、論文は出ません。誰かの後追いだと論文として評価されない、厳しい勝負の世界です。一方では研究は教育の過程でもあるので、学生がそれを通じて成長しなくてはいけない。そこのバランスにはいつも苦慮しています。
僕がテーマと研究行程までを全て明示して、全部これでついてきなさい、これをやりなさい、というのは間違っていると思いますし、テーマだけを与えて後は全部学生が自分でどうにかしなさい、というのも間違っていると思います。日々、最もふさわしい研究と教育のバランスを考えています。

Hさん 小泉先生は、授業の時はわかりやすく、質問をしたら親身に教えてくれます。研究のときは、的確、という印象が強いです。頭ごなしに指導するのではなく、どこがうまく行かない原因かの事実を端的に教えてくれる感じです。僕があまりうまく研究を進められなかった時に、小泉先生に、僕らは学生に研究をする機械のように動いてほしいんじゃない、やることを全部示すわけではないから、君たちに何をやるべきなのか自主的に考えて物事に取り組んでほしい、と言われたことがあります。普段から学生に淡々と接する先生なので、印象に残っています。

Bさん 授業の補講に用事があって出られなかったときに、個別に補講をしてくれたことがありました。一対一の演習だったのですが、ものすごくやさしく、理解できるまで一から丁寧に説明してくださったことがあって、印象に残っています。
大阪大学 大学院情報科学研究科の魅力は何だと思いますか。

世界レベルである、ということでしょうか。学生は気づいてないかもしれませんが、学生、特に博士前期課程のうちから国際会議に参加できる環境があります。学生は簡単に「この前どこの国際会議に出てきた」と言いますが、本当は簡単なことではないと思います。また、そうした場にも気負わずさらっと論文を書いて発表する学生が居ることも素晴らしいところだと思います。もちろん、他の大学でも国際会議に参加する学生は居るでしょうが、ここはその中でも世界第一線にも出られる学生が多いと思います。そうした学生を教育できる環境や設備が整っている、とてもいい環境だと思います。
情報科学研究科の教員は、普段の研究生活の中で、学生をどう巻き込むといい感じに国際会議の場に持っていけるか、というのを試行錯誤されていると思います。博士前期課程のうちから国際会議に参加していることは、教育と研究がいい感じでバランスよく動いている証左ではないでしょうか。学生が研究者の手足ではなく、その人なりに考えて、研究テーマに求められることもやってくれている、といういい例が多くあります。あとは、みんなこっそり他の研究室はライバルだと思っているんじゃないでしょうか。常に他の先生よりもいい会議に出したい、いい論文を出したいというように、研究科全体が、いい競争になっているんでしょうね。

Hさん 情報科学研究科は、自由で、やりたいときにやりたいことができる環境が整っていると思います。生徒の自主性を重んじ、研究したいときにできる環境と先生のサポート体制が整っています。もう一つは、建物が綺麗で研究室が広いこと。意外と大事なのかなと思います。きれいな研究室は研究のモチベーションもあがるので、気に入っています。

Bさん わたしはネットワーク学専攻で、深層学習(ディープラーニング)を使った画像処理をしています。今は医療機関と共同研究をしており、サーモグラフィを用いた温度管理に関する研究をしています。実際に病院訪問をしたり、貴重なデータを扱ったりしています。新生児の部位検出などがメインですが、ゆくゆく
は様々な部位の温度推定をしていきたいです。
情報系は裾野が広いぶん、何にでもなれるのが良いところだと思います。研究内容が幅広いので、医療にもスポーツにも、教育や金融にも関われるので、やりたいことが定まっていない高校生でも、自分の活路を見つけられると思います。
普段の研究では、論文を書いても発言しても、「これなら会議に出せるよ」「論文だせるよ」と先生方が褒めてくれるので、自分でも自信が生まれ、「会議に出てみようかな」「論文出してみようかな」と思えるようになります。
これから研究科を目指す学生に向けて、メッセージをお願いします。

情報の世界は一般化してきています。高校でも情報を勉強するようになるなど、情報が一般教養になりつつあります。その一方で、最先端の領域は非常に変化および多様化の速度が速い分野です。大阪大学大学院情報科学研究科は世界最先端の研究体制を維持しているので、次の世代の情報科学を学んでみたい学生には勧められると思います。普段勉強する科目としての「情報」の先にあるものを見てみたい学生は、ここに来てみてはどうでしょうか。

※撮影時のみマスクを外しています。