在学生の方へ講義・履修高度教育活動教育の国際化2023年度リスト

2023年度(令和5年度)の海外インターンシップ

菊地 良将

滞在先:アイントホーフェン工科大学 (Technische Universiteit Eindhoven), Netherlands Eindhoven

派遣期間:2022年8月25日~2022年9月24日

はじめに

私は8月25日から9月24日までの1カ月オランダのアイントホーフェン工科大学 (Technische Universiteit Eindhoven) で George Fletcher 先生の下で海外インターンシップを行いました.

滞在先の生活と研修内容について報告します.

オランダ・アイントホーフェンについて

オランダはヨーロッパ北西部に位置する小国です.先進的な農業技術,そして自転車文化や水の管理技術などで知られています.首都のアムステルダムをはじめ,ロッテルダム,ユトレヒトなどの都市が有名で美しい運河,風車,チューリップの風景が特徴的です.公用語はオランダ語ですが,英語レベルが非ネイティブの国ではトップクラスであるため,非常に多くの国民が英語を話します.私も英語だけで日常生活を不自由なく送ることができました.滞在先の研究室でもオランダはもちろんブラジルやロシア,中国など世界中からの留学生がいました.

今回私は人口第5位の都市であるアイントホーフェンに滞在しました.アイントホーフェンは技術とデザインの町として知られています.世界的な大企業であるPhilipsの発祥の地でもあり,現在は多くのハイテク企業やスタートアップが集まる地域です.デザインにも力を入れており,北ヨーロッパ最大のデザインの祭典である Dutch Design Weekの開催地でもあります.

天候は,大西洋から流れる湿気た空気のため,天気は曇りが多い印象でした.

滞在先の大学も大変きれいで (写真1枚目),また,大学の近くにビール工房があり,土日などは昼間から路上で大変おいしいビールを飲めます(写真2枚目).

研修内容について

時間グラフとは
私は時間グラフの生成手法について研究を行いました.日本で時間グラフにおける他のタスクについて取り組んでいたこともあり研究テーマとして選択しました.初めての研究テーマであったことと,滞在期間が1カ月と短かったため,研修内容としては既存手法の調査と整理になります.

そもそも,時間グラフとはノード (頂点) とエッジ (辺) が不変な一般的なグラフとは異なり,時間変化とともに,ノードやエッジが発生・消失するグラフのことです.実世界の様々なものを表現することができ,代表的な例としてはSNSネットワークや仮想通貨の取引ネットワーク等が挙げられます.時間グラフを分析することで,幅広い分野において知見を得られることができます.

時間グラフ生成について
時間グラフ生成は,ベンチマーキング,データの秘匿化やData Augmentationなどの応用先が考えられます.時間グラフ生成は主に2ステップからなります.入力となる実データから時間グラフの生成の根底となる情報の抽出を行うステップと,抽出した情報を基に時間グラフ生成を行うステップです.生成手法毎に時間グラフの根底となる情報に何を採用するかが異なります.大きく分けて2種類あり,ノードの次数分布といった具体的な統計量を採用する手法 (ヒューリスティックな手法) と,特定の特徴量を採用することなく深層学習を用いる手法です.前者は人間が特徴量を設計するため,人間が理解しやすい点と,深層学習を用いる手法に比べるとグラフ生成に要する時間が短いことが特徴です.後者は人手で具体的な特徴量を設計する必要がないことや,入力の元データの再現度が高いことが特徴です.私はグラフ生成に要する時間の観点から前者の手法を,主に調査対象とました.深層学習を用いた手法では,せいぜい数千から数万ノードほどのデータしか入力に使用することができません.しかし,現実のデータにおいてはノード数が数十万や数百万に上ります.つまり,スケーラビリティの観点から深層学習を用いた手法が難しいと判断しました.

ヒューリスティックな手法で最先端の手法はMTMと呼ばれる手法です.この手法では, temopral motifに注目しています.temporal motif とは時間グラフの発展する際の構成要素のことです.「Aの友人のBとCは友人になりやすい」というような現実世界で頻出する発展の傾向を捉えることが目的です.

現在はインターンシップを終えたのちも時間グラフの生成手法についての研究を進めています.時間グラフの発展の構成要素であるtemporal motifを捉えることでより精度の高いグラフ生成が行えると考えています.そこで,MTM の課題を解決することで新たな手法の開発に取り組めると考えています.

おわりに

英語力に不安が大きく,初めての海外渡航でしたが多くの方々の協力のおかげさまで,大変貴重な経験ができました.中でも様々なバックグラウンドを持つ人々との交流を通して様々な文化に触れることができたのは,人生を通して生きるものだと感じました.

情報科学研究科の皆様,研究室の皆様,現地での生活を支援していただいた皆様に深く御礼を申し上げます.

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