小島 豊[修士1年]
情報科学研究科 マルチメディア工学専攻 ビックデータ工学講座
●滞在先:アイントホーフェン工科大学 (Eindhoven University of Technology), Eindhoven, The Netherlands
●渡航期間:2025年8月10日~2025年10月11日
はじめに
私は2025年8月10日から10月11日までの2ヶ月間、オランダのアイントホーフェンにあるEindhoven University of Technology(TU/e)という大学にいるMykola教授の指導のもとで研究を行いました。現地での研究内容や生活の様子、そしてチェコ・プラハで開催された国際会議RecSys 2025への参加経験について報告します。
オランダ・アイントホーフェンについて
TU/e があるアイントホーフェンは、オランダ南部に位置する人口5位の都市です。公用語としてオランダ語が用いられていますが、オランダは非英語圏の中でも英語能力が極めて高い国として知られており、実際に滞在中は英語だけで日常生活を不自由なく送ることができました。想像していた以上に現地の方々は親切で、道に迷ったときやお店での買い物の際にも、皆さん快く助けてくださいました。
オランダの大きな特徴として、山や坂道が少なく、自転車での移動が一般的であることが挙げられます。私自身もホームステイ先の方から自転車をお借りして、通学や買い物など日々の移動手段として活用しました。自転車専用レーンが整備されており、とても快適に移動できました。
アイントホーフェンは「テクノロジーとデザインの街」として知られています。多くのハイテク企業が集積しているほか、街を歩いていると洗練されたデザインの建築物やアート作品に数多く出会うことができ、創造性にあふれた雰囲気を肌で感じることができました。

TU/e

有名な風車
研究内容について
今回のインターンシップでは、推薦システムにおける人気バイアスに関する研究に取り組みました。日本で既に人気バイアスについての研究を行っていたこともあり、今後の研究テーマをどのように発展させていくかを中心に、文献調査や議論を重ねました。
推薦システムとは、ユーザが好みそうな商品やコンテンツを予測し、提示するシステムのことです。ECサイトや動画配信サービス、音楽アプリなど幅広い分野で活躍されています。
その中での、人気バイアスとは、推薦システムにおいて、既に人気のあるアイテムがさらに推薦されやすくなり、結果としてニッチなアイテムが埋もれてしまう現象のことです。この問題は推薦の多様性や公平性の観点から重要な研究テーマとなっています。推薦システムの実運用上では、推薦システムが既存のデータから学習を行いユーザにアイテムを推薦する。その後推薦されたリストをもとにユーザはアイテムを選択することでデータが更新される。このデータを推薦システムが再学習するというフローが取られています。しかし、推薦システムがすでに人気のあるアイテムを推薦してしまうという問題点があることからユーザは偏った推薦を受け取り、それによって作成されるデータは偏りを持ち、推薦システムはより偏った推薦をしてしまうというフィードバックループが存在します。
現在はインターンシップを終えたのちも、推薦システムの人気バイアスに対しての研究を進めています。推薦システム環境をシミュレーションすることで人気バイアスの原因を特定し、新たな推薦システムの手法を考えることができると考えています。

推薦システムのフィードバックループ問題
チェコについて
インターンシップ期間中、チェコのプラハで開催された国際会議RecSys 2025に参加する機会をいただきました。最先端の研究に触れ、世界中の研究者と交流できる貴重な経験となりました。
RecSys(ACM Conference on Recommender Systems)は、推薦システム分野における最も権威ある国際会議の一つです。今回の参加を通じて、推薦システムという一つの分野の中にも、多様な研究テーマやアプローチが存在することを実感しました。
アルゴリズムの改良だけでなく、ユーザー体験、公平性、説明可能性、産業応用など、様々な観点からの研究発表があり、非常に刺激を受けました。また、ポスターセッションや休憩時間には、世界各国の研究者と直接議論を交わすことができ、異なる視点や新しいアイデアに触れることができました。

おわりに
この2ヶ月間のオランダでのインターンシップでは、異なる文化環境の中で研究に取り組み、国際会議にも参加することで、グローバルな視野を持つことができた大変貴重な経験となりました。
最後に、このような貴重な機会を与えてくださった指導教員の先生方、Mykola教授、そして関わってくださったすべての方々に心より感謝申し上げます。