三木 隆哉[修士1年]
情報科学研究科 マルティメディア工学専攻 鬼塚研究室
●滞在先:アイントホーフェン工科大学 (Eindhoven University of Technology), Eindhoven, The Netherlands
●渡航期間:2025年8月30日~2025年11月3日
はじめに
私は2025年8月30日から11月3日までの約2ヶ月間、イギリスとオランダにて海外インターンシップを行いました。イギリスでは、ロンドンで開催されたVLDB 2025に参加し、オランダでは、アイントホーフェン工科大学 (Eindhoven University of Technology) にてGeorge Fletcher教授とNikolay Yakovets准教授の下で研究を行いました。
研究内容および現地での生活について報告します。
イギリスについて
イギリスは、ヨーロッパ大陸の北西岸に位置する島国です。長い歴史と伝統、王室文化、そして世界的な金融市場や最先端のアカデミアで知られています。首都のロンドンをはじめ、オックスフォードやケンブリッジといった学術都市、エディンバラなどの都市が有名で、歴史的なレンガ造りの街並みと近代的なビルが融合した風景が特徴的です。公用語は英語ですが、全体的にアクセントが強く、簡単な英文であっても聞き取れない場面があるなど、本場の英語の難しさを肌で感じることができました。
イギリスの天候は非常に変わりやすく、急に雨が降ったり、雨が降っていても少し待てば快晴になったりするなど、1日に四季があると言われるイギリス特有の気候を感じることができました。
滞在中の休日は、ロンドンから少し足を伸ばしてオックスフォードを訪れました。映画「ハリー・ポッター」ゆかりの地や歴史的な街並みを巡り、研究活動の合間に素晴らしい異文化体験ができました。


オランダについて
オランダはイギリスと同様にヨーロッパの北西に位置する国です。国土の多くが海抜ゼロメートル地帯であり、かつ非常に平坦な地形が続いているため、電車に乗っていても地平線が見えるほど視界が開けています。
滞在先の研究室は非常に国際色豊かで、特にロシアや、隣国のベルギー出身のPhDの方々が多く在籍されていました。最初は強いアクセントに戸惑いましたが、毎日会話することで耳が慣れ、多様な英語を聞き取るリスニング力を大きく向上させることができました。
今回滞在したアイントホーフェンには、「ヨーロッパで一番長い」と言われるバー・ストリートがあり、夜になると多くの学生や地元の人々が集まって非常に賑やかで活気がある雰囲気が漂っていました。
休日は、発達した鉄道網を利用して各地を巡りました。世界遺産のキンデルダイクを訪れて風車を見たり、美術館でゴッホの「ひまわり」やフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」といった名画を鑑賞したりと、オランダの文化と芸術を存分に満喫することができました。


研修内容について
1. VLDB 2025
VLDB 2025では、データベースの問合せ最適化をはじめ、データベースに関する最新の研究についての発表を幅広く聴講しました。全体として、「データベースエンジン」をテーマとしたセッションが特に人気を集めていたのが印象的でした。ポスターセッションでは、口頭発表で質問しきれなかった内容や、目に留まった興味深い研究を中心に見て回り、多くの研究者と直接議論を交わすことができました。数ある発表の中でも、本インターンの受け入れ先であるアイントホーフェン工科大学の学生による発表は、私の研究内容と関連が深く、大変参考になりました。

2. 研究内容
アイントホーフェン工科大学では、グラフデータベースへの問合せの1つである正規問合せを対象に、カーディナリティ推定に関する研究を行いました。私は学部時代に正規経路問合せの研究に取り組んできましたが、本インターンシップでは、より一般的で表現力の高い問合せクラスへと研究対象を拡張するために、本テーマを選びました。
カーディナリティ推定とは、ある問合せに対して、その結果のサイズを実際に処理することなく予測する技術です。これは、データベースシステム内における問合せ最適化の段階で、最も効率的な問合せ実行計画を決定する際の判断材料として活用されます。
グラフ問合せのカーディナリティ推定手法は数多く研究されていますが、正規問合せを対象とした手法はまだ発展途上です。既存手法の多くは、グラフの統計情報を利用するアプローチをとっていますが、これらの手法はグラフの構造を正確に捉えることができず、複雑な問合せに対して十分な精度が得られないという課題があります。
そこで私は、グラフ構造を直接探索することで高精度な推定が可能である、ランダムウォークに基づくサンプリング手法に着目しました。この手法は、サブグラフマッチングという別の問合せにおいて、高い精度でカーディナリティを推定できることが示されています。しかし、この手法は構造が固定されたサブグラフマッチングを前提としているため、正規問合せを表現する際に不可欠な推移閉包と射影には対応していないという課題があります。ここで推移閉包とは、正規表現におけるクリーネ閉包のように、辺を再帰的に辿ることで任意の長さの経路を表現する操作を指します。また射影とは、探索された経路全体から、最終的な結果として必要な特定の節点のみを抽出する操作を指します。本研修では、これらの問題を解決するために、サンプリング手法を正規問合せへと一般化し、既存の統計情報を用いた手法よりも高精度な推定を実現する手法の定式化に取り組みました。
おわりに
2ヶ月もの期間、海外に滞在した経験がなかったため不安もありましたが、現地の方々が優しく接してくださったことで有意義な時間を過ごすことができました。本インターンに参加する前と後を比較して、研究力と英語力ともに成長できたと実感しています。
最後に、本インターンシップに際し、快く受け入れてくださったアイントホーフェン工科大学のGeorge Fletcher教授とNikolay Yakovets准教授に深く感謝申し上げます。また、普段の研究指導に加え、本インターンシップへの挑戦を後押しし、快く送り出してくださった佐々木先生、ならびにこのような貴重な機会を提供していただいた大阪大学大学院情報科学研究科の関係者の皆様に深く御礼申し上げます。