バイオ情報工学専攻
ゲノム情報工学講座
准教授
瀬尾 茂人
Seno Shigeto
瀬尾先生はとても長い年月を見越して研究をされていると思うのですが、
研究のモチベーションみたいなものはありますか?
基本的にあまりモチベーションの高い人間ではなく、周りからのプレッシャーがある方が研究するタイプだと思っています。なので共同研究をかなり多く手掛けています。モチベーションに関わらず仕事ができて他分野の方の解析のお役にも立てますし、先方とのやり取りにより、私のリフレッシュにもなります。いっぱい引き受けすぎてレスポンスが遅くなりがちなのは申し訳ないと思っているのですが。
共同研究は、主に他学部の先生方が持ち掛けてくれる案件を解析するものが多いです。最近ですと、阪大の救急センターの先生とCOVIDがらみのRNA発現解析をしたり、オミックス解析と言って発現データとタンパク質のデータやマイクロRNAのデータを一緒に解析したりしています。他には、京大の先生方と、大豆やトマトなどの食物と脂肪の関係での発現解析をしています。
今は修士の学生さんに手伝ってもらって、薬学部の先生と筋肉の回復についての画像解析をしたり、情報通信研究機構の先生と微生物が沢山映った顕微鏡から自動でその種類を認識する研究をしたりしています。あとは、乳腺外科の先生と研究している、手術中にがんの組織を取りこぼしていないかをチェックするような仕組みの開発もあります。常時、10件から20件くらいの共同研究を同時進行でやっています。研究の進度がばらつきやすいのが申し訳ないのですが、違う研究で得た知見が別の研究のヒントになりそうだ、と思いつくところもあります。
阪大と関わりのある先生方は良い先生が多いですね。自分の研究に信念を持っていて、研究を通じて色々と教えてくれるんです。年を重ねるほど、自分にものを教えてくれる人はどんどん貴重になっていくのですが、そういう意味では大学は面白いですね。専門家が沢山いて、自分の知らない色々なことを教えてもらえる環境だと思います。

瀬尾先生がこれまで研究をされてきて、それがどう社会とつながっていますか、
と聞かれたらどう答えますか。
研究は、どこまで行ったらゴールになるのでしょうか?
社会とのつながりは、とストレートに聞かれてしまうと答えるのが難しくなりますね。情報科学的に新しい解析の方法を考えても、結局昔ながらのロジスティック回帰でいいかな、と思ってしまうこともあります。実際に、30年・40年前に編み出された方法で9割くらいの精度は出ているわけですから。そんな中で、私にとって、共同研究をして他分野の研究者や企業の方の役に立つ、というのは分かりやすい社会とのつながりだと思っています。そして、自分の研究は自分の研究として、やりたいことをやる。なぜなら、自分が楽しいと思っていないと、学生さんにも研究の楽しさを説明しにくいような気がするからです。
研究のゴールを決めるのは難しいですよね。私は、情報をやろうと思ったきっかけが、人工知能とか自動で何かするみたいなところでした。なので、共同研究で頼まれるような解析を、こっそりと自動でできるような仕組みを作っておいて、寝ている間に終わっているような仕組みを、最終的には作りたいと思っていますね。

研究に行き詰った時に、リフレッシュしたり、乗り切ったりする方法はありますか?
研究のリフレッシュに別の共同研究をするような感じです。色々うまくいかないことがあっても、1つうまくいっていることがあると気が楽です。ストレスをためないようには、できるだけ気を付けてます。
研究に行き詰ったときのリフレッシュ方法ですが、私は学生時代にそれができなかったんですよ。勉強して知識を得たくて進学してきてるのに、学問の全容も分からないうちから自分の研究テーマなんて決められないですよね。これから勉強していくところなのに、何を研究するかを決めなきゃいけないのは本当に難しい。それに、学生さんは研究テーマを決めた後は、なかなか自分ではテーマを変えられないので、ほんまに大変だと思います。できないのにやらなければいけない仕事を、どうにかしなければいけないわけですから。
なので、裏を返せば、やりたいことを見つけるっていうのが本筋なんじゃないかと思います。自分のやりたい研究をすること。もらったデータよりも、自分が本当に解きたい問題をみつけて、それを解く。やらされているんじゃないという体でやる。そうすると、行き詰る状態を迂回できるんです。自分でテーマを決められるようになるから、迂回するっていうのができるようになるので、それが大事なのかなと。でもすごい大変なんですけどね。
あとはよく聞くかもしれませんが、研究室以外での人間のつながりを大事にすること。特に最近はコロナ禍で学生さん同士のコミュニケーションが取れなくなって、いろいろ話してストレス解消するっていうことが難しくなりがちですが、研究室以外でのつながりは大事にしてほしいと思いますね。
研究を続けているとわかってくると思うのですが、基本的に研究はうまくいかないものです。ストレスを軽くする、というのは重要ですが、大前提としてそれなりに時間を使ってやらないとできないものでもある。なので、早寝早起きをちゃんとするのが一番大事です。朝起きて研究して、夜はちゃんと寝る。例えば中学・高校の時の勉強時間くらい、朝9時から夕方5時まで研究している大学生は実は少ないのではないかと思うので、そのくらいやったら色々と成果が出るんじゃないかな、とは思いますね。

