受験生の方へ研究者から受験生へのメッセージリスト

研究者から受験生へのメッセージ

マルチメディア工学専攻
ビッグデータ工学講座

准教授

佐々木 勇和

Sasaki Yuya

大阪大学に編入学した経緯

大阪大学工学部には、北海道の釧路高専から編入してきました。そのため、大阪大学の学生としての生活は学部3年生からのスタートです。入学当初の時期はかなり辛かったです。3年生は既に仲の良いグループが出来上がっていて、なかなかどのように友達を作るか、どのように声を掛ければよいのか、というところが大変でした。ただ、この経験があったからこそ、今では海外に行ってもコミュニケーションを取ることには特に苦労することもなくなりました。自分にとって今の辛さを悲観的に感じるケースもありますが、将来的に見るとその辛い経験が自身の成長だったり価値につながることが多いと感じています。

学生にはどのようなことを話していますか?

いつも話すのは「個人主義と社会主義」、そして「目的と目標」の2つの話です。ここでいう「個人主義と社会主義」とは、私たちが生きる社会の話です。各人が好きなことをやるのが個人主義。社会や組織、地域を良くするのが社会主義です。個人主義の考えを持った人だけの集団では、それぞれの好きなことばかりできるかというと、そうとは限りません。社会の発展を誰も考えず、治安が悪くなり、個人間の争いや最悪の場合は戦争に発展してしまう可能性もあります。
一方で、社会主義の人ばかりがいれば良いかというと、違います。社会を優先し、個人が制限されると、自分がやりたい思索や活動ができなくなり発展の芽を摘むことに繋がる可能性があります。個人が活躍することで、社会を良くできるアイデアが生まれることは歴史を見ても明らかで、大切なのは個人主義と社会主義のバランスです。人の役に立つという社会主義的な思想をベースにしつつ自分がやりたいことをやるという個人主義の両輪が大切だということをいつも話しています。

「目的と目標」の違いについてもよく話します。目的は文字通り、「目指す的」を意味します。的に当たったら、そこで終わり。最終ゴールに到達したことになります。目標は、「目指す標(しるべ)」を意味し、目標は目的へと繋がる道であり、手段と言い換えることもできます。
例えば「お金持ちになりたい」という願望があるとします。もし、お金を使って「大きな家に住みたい」などお金を手段として新たに達成したいことがある場合、それは目標になります。なので、お金持ちになるということはただの手段であり、お金持ちになる必要はないかもしれません。
「本当に自分がやりたいことを目的として定めよう」と私は学生に話します。「大学入学を目的にする」と、入学後に何がしたいか分からなくなって困ることがあります。大学に入ることを目的にするのではなく、自身の本当にやりたいことを見つけ、取り組み、それさえ達成できれば、他のことは些細なことになるというのが重要です。特定の大学にこだわる必要すら本来はないのかもしれません。目的さえ定まれば、後は辿り着くための道を自分の得意なことに合わせて幅広い選択肢から選べるようになります。その状態なら、目標に辿り着けない、または失敗した時でも、新たな目標、つまり新たな手段を考えることができます。目的がしっかりしていれば、細かいことが気にならなくなり、大事なことに打ち込むことができます。

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