情報基礎数学専攻
離散幾何学講座
准教授
東谷 章弘
Higashitani Akihiro
先生は海外の研究者と積極的に交流されています。どのような交流があるのでしょう
阪大・京大で過ごしたポスドク時代には、運よく獲得できた潤沢な研究費を有効活用し、海外のさまざまな研究者を訪ねました。共同研究を行うために、数週間滞在させてもらうことが多かったですね。
日本でエルハート理論を研究しているのは、私を含めた日比先生の元学生ぐらいです。しかし海外に目を向けると、ドイツとアメリカを中心に多くの研究者がいます。私は彼らがどのように研究を進めているのか知り、新しい発想を吸収したいと考えました。もちろん論文を読むことはできますが、より理解を深め、論文からさらに進んだ最新の研究を知るには、本人に会いに行くのが一番です。年に3回ほどドイツ、アメリカ、イギリス、カナダなどに赴き、2〜3週間滞在しながらさまざまな研究者と話をするようになりました。
私のこの研究スタンスは今も変わりません。現在も科研で国際共同研究加速基金を取得※1していますが、その一環で先日も、ドイツのライプツィヒにあるマックス・プランク研究所で世界各国からエルハート理論の研究者が集まる学術会議※2を主催し、活発な議論を行いました。
※1 代数的手法および組合せ論的手法を用いた格子凸多面体論における未解決問題への挑戦 (国際共同研究強化(B) 2021年10月 - 2026年3月)
※2 RECENT DEVELOPMENT ON LATTICE IN LEIPZIG(2026年1月20日-23日)
素朴に思いつく問題は、他の多くの人が思いつくものであり、既に研究されているか、難しすぎて誰もできないかのどちらかです。
私は「こういう場合はどうだろう」と文献を探してさまざまなアプローチを試みるなかで、「この問題なら難しいけれど自分でも解けそうだし、まだ誰もできていないぞ」という未解決問題を見つけることから研究をスタートさせています。私にとっての研究では、問題を解く時間より、適切な問題を設定することの方が大きな意味を持ちます。研究の8割を占めるのは、問題を探して設定することなのです。海外の研究者との学会開催や共同研究を積極的に行い、さまざまな最新研究に触れつつ議論を重ねる活動は、この8割に含まれています。
先生の研究室の特徴や雰囲気について教えてください
エルハート理論というニッチな領域で、グローバルに知の交流を行っているのが私の研究室です。
現在(2026年1月)は修士課程5名、博士課程3名の学生が所属(うち1名は外国人)しているのですが、うち阪大出身者は2名だけ。それ以外は全国各地の他大学から集まってきています。純粋数学のなかでもエルハート理論に興味を持った学生もいれば、学部で学ぶ可換環論に興味を持ち、そちらから私の研究室を知ったという学生たちも少なくありません。
彼らには、博士課程での約1ヶ月の海外研究滞在をほぼ義務としています。学生との共同研究という形で研究費を活用し、私の代わりに海外に行って、最新研究情報を持ち帰ってもらうということをしています。
一方で、私のところを訪れる海外研究者も多くいます。以前も外国人特別研究員というポスドク枠を活用して私の研究室にいた方が複数名いるのですが、ちょうど今朝もアメリカの学生から同様の相談があったので、オンラインで打ち合わせをしていました。
また私は定期的に外国人を博士課程の学生として受け入れることも目標としており、2年前にはインドから、1年前にはドイツからの学生が博士課程を修了しました。今も中国人学生が1名在籍しています。彼らの多くは、海外の共同研究者からの紹介ですね。
雰囲気については、ISTのなかにありながら、うちの研究室は主に紙とペンでガチャガチャやるスタイルです。ゼミでも研究室にある黒板で「こういう問題をちょっと考えてみようか」と私が提案したり、逆に学生側が「こういう式が成り立ちます」と提案したりしてくるといった交流を行っています。もちろんパソコンでプログラムを組んで計算をさせることもありますが、基本はアナログです。そこはIST内でも異色かもしれませんね。
なお私の研究室で学位を取った学生はほぼ研究者の道を目指して頑張っていますが、AI開発などが活発になっていることもあり、数理学の学位を持つ人材の人気は年々高まっているのを感じています。また修士卒だと銀行・生保・損保なの金融系やメーカー、エンジニア系、教職に進む学生が多いですね。