研究科について

研究科長からのメッセージ

情報科学で社会の分断をつなぐ

研究科長原 隆浩

大阪大学大学院情報科学研究科では、「情報科学で社会の分断をつなぐ」ことを目標に、さまざまな社会問題を解決するための情報技術の研究に取り組んでいます。

スマートフォンやインターネットの普及により、情報ツールやサービスは一般生活に浸透しました。また、ビッグデータ解析や人工知能技術の急速な発展によって、情報技術はあらゆる学問領域、ビジネス、社会活動や生活に欠かせないものとなっています。そのなかで、情報を使いこなす能力(情報リテラシー)の格差によるデジタルデバイドや、人工知能による雇用機会の喪失など、情報によってもたらされる問題や不安も指摘されています。しかし、これまでの歴史が示すように、技術革新による産業革命が世界や人類を豊かにするか、不幸にするかは、その技術の使い方、つまり人類の振る舞いに大きく依存します。

近年、貧富、年齢、地域(都市、郊外、過疎地など)、障害・持病などさまざまな要因による社会的格差や、宗教、思想などによる社会の分断が大きな問題となっています。急速な発展により先に述べたような新たな社会問題も心配されている情報技術ですが、その一方で、社会の分断という人類が面している最大の課題に対して、それらを解決する唯一無二の存在でもあります。例えば、人工知能や遠隔操作技術、バーチャルリアリティ技術を用いて、教師や医師が不足している過疎地や生活に余裕がない世帯に対して十分な教育・医療を提供したり、スマートシティ、自動運転、見守り・行動支援などの技術を用いて、高齢者や障害のある人々が豊かに生活するための支援が可能となります。

情報科学は、もはや特定の人がコンピュータを使いこなすための学問ではありません。自由な発想で、世界を捉え、コンピュータ上で表現(モデル化)し、重要な問題を解決するための諸課題に取り組む学問なのです。つまり、世界や人類と調和し、社会をデザインする学問領域といえるでしょう。もちろん、未知の真理の発見を目的とした自然科学分野の学問が重要であることは言うまでもないですが、情報技術には、これらの学問とは大きく異なる魅力があるのです。さらに、情報科学は単独で価値を創出するだけではなく、他の学問領域、技術分野との連携・融合によりさらに真価を発揮します。

大阪大学の情報分野における研究力は、国内トップレベルです。さらに、複数の分野において世界トップレベルで学術界をリードしています。皆さん、魅力溢れる情報科学を、本研究科で一緒に学びましょう。そして、情報技術の重要性が益々増すこれからの社会を支える情報技術者・研究者となり、世界に羽ばたいて活躍しましょう。